秋田を代表する吟醸蔵、大好評の「活性原酒 六舟」の蔵元、刈穂の新商品。 これはホントに、今できたばっかり・・・ほやほやのお酒です。
この「秋田酒造誌・技術編」によると、当時は酒造技術も発展途上の段階であり、とにかくお酒にしてしまうことが先決だったようです。 品評会に出品された清酒でも、精米歩合はせいぜい80%、良くて60%だったようで、酵母もおそらくは蔵特有のいわゆる「家付き酵母」であったろうと思われます。 もろみの仕込み配合や温度経過にいたっては、当たり前のことですが、現在の秋田地酒の最大の特徴となっている「低温長期発酵」の技術なんて当時はまだ無いわけですので、良く言えば「自然のまんま発酵」だったんです。(笑) ですが、悪いことばかりでもありません。 酒母はほとんどが当時普及し始めた「山廃仕込み」で造られていたようですし、原料米は今では"幻の酒米"と呼ばれているあの「亀の尾」を使用しているものが最も多かったようです。 記録によると、酸が多く、しかも辛口であったようで、現在の秋田の酒とは大分趣の異なる味であったようです。 そこで「幻の酒米 亀の尾の復活」ということもあったんでしょうが、蔵元では「刈穂の原点」のお酒を造ってみたかったんでしょうね。 当時の資料に基づいて、できるだけ忠実に再現し、タンクで2本だけ、720mlですと4000本ほどを仕込んでみたのです。 原料米には、もちろん「亀の尾」を100%使用。精米歩合は60%。酒母は当時の配合と温度経過による山廃酒母。そして、もろみは当時の仕込み配合と温度経過がとられています。 唯一、残念ながら再現できなかったのは酵母で、当時の「家付き酵母」を入手することはもはや不可能なので、それに最も近い種ということで「マッカロマイセス・サケ」という酵母が使われています。 これは、清酒酵母として明治29年に初めて分離された現存する日本最古の酵母です。 こうして、大正時代の仕込みは再現され2本のタンクで出来上がったわけです。 ・・・そして、ここからお話はおもしろくなります。(笑)
実は当初、刈穂ではこのお酒を一本だけ販売するつもりで仕込んだそうです。 それも、困ったことに味わってみたら、どちらも美味しかった・・・。 普通でしたら、この2本のタンクをブレンドして中間の味で販売しようとするのですが、どちらも個性的な味でホントに美味しく仕上がってしまい、ブレンドするには忍びないと思っちゃったんですね。(笑) 自然のイタズラか・・・はたまた、お酒の神様が「どうせ復活させるなら、おいら、甘口と辛口のふたつ造っちゃうもんね。」と思ってしまったのか・・・ とにかく、人間の思惑を越えたもの・・・が出来上がってしまったわけで、蔵元の刈穂は「嬉しい悲鳴」をあげながら、甘口と辛口の2本のお酒として販売したわけなんですね。 というわけで、早速取り寄せて、新年会代わりに、私と家内とページお助けマンのtada君で試飲してみました。
まずは赤茶色の瓶、甘口のほうは、口に含んだ時は確かに甘いのですが、後で涼やかな酸味が感じられ、そのせいか上品な甘さでベタベタすることがまったくなく、すーっと入っていきます。 そして、緑茶色の瓶、辛口のほうは、-12という日本酒度のわりには、ヒラ辛いという感じではなくスパッとキレのあるお酒で、そのせいか酸味が甘口の方よりも感じられるようでしたが、お酢の酸っぱさではなく、果実のように実に爽やかでした。
しかし、大笑いさせてくれたのはtada君で「うわー酸っぱい・・・レモンをカジっているみたい」といいながら、「でも、やめられなくなるね」と顔をくしゃくしゃにしながら飲んでました。 三人共通の意見としては、両方とも現代のお酒とはまったく別の次元の味がして、ともすれば、人によっては「奇妙な味」と捉えられるかも知れないけど、どちらも、果実の持つ爽やかな酸味が感じられてワインの旨さに近い印象だと言うことで、是非、紹介しなければならない2本であるという結論に達したわけです。 自然の偉大さ、「神様の造ったお酒」とでも言いたいお酒ですよね。・・・これは。 ラベルは大正3年に「大正天皇即位記念品評会」で頂いた賞状をそのまま図案化したモダンなもので大正浪漫あふれるデザインですので、ラベルを眺めながら大正時代に思いを馳せつつ味わっていただきたいと思います。
飲み方としては、冷蔵庫でよく冷やし、飲む10分ぐらい前に出しておくと、より美味しく頂けることと思います。
あっと・・・言っときますけど、2本のタンクで甘口と辛口のお酒ができてしまったので、それぞれ、2000本しかない超限定品です。 それに、まさに「神様が造られたお酒」と言う感じなので、来年、もし同じ銘柄のお酒が出たとしても、今年のような旨さで出せるという保証はまったくありません。・・・と言うよりも、もう造らないかも知れません。
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