7年勤めた会社を真紀は出産を期にやめた。子供を預けて勤め続ける方法も考えたが、和也の協力なしには無理で、今の和也の状況を考えると、とても望めることではないとよくわかっていた。
一時期は育児に専念しようと決めた。働く意志さえもっていれば、チャンスはまたあるだろうと思った。その間は充電期間と考えることにして、絵本を作って暮らそうと考えた。
喜久江と名づけた女の子は和也と真紀に見守られすくすくと育っていった。育児をしてみて、真紀が一番困ったのは喜久江が物をいわないことだった。当たり前といえばそうなのだが、泣くか黙っているか眠るかくらいしか意志表示が赤ちゃんにはない。
思ったより人見知りもしなくなり、実家の母を覚え、嬉しそうに笑う。おばあさんと呼ばせないと言ったのはすっかり忘れて喜久江相手に終日ニコニコしている母だった。
風邪をひいて熱を出したり、大人の食べ物をねだっておなかをこわしたりしながら喜久江は順調に大きくなった。
3歳のお祝いの前日に、お宮参りに着せようと用意した白い襟のついた真紅のビロードのワンピースを一人で取り出し、着てみると騒ぐ。明日ね、と言っても今着るのだと言い張り、ついに負けて、着せてやると、大はしゃぎして家中をはねまわった。
いい加減で着替えさせようとした矢先、片付け忘れたテーブルの上の醤油差しに激突し、白い襟に見事な染みを作った。
両家の親たちが談笑して、それぞれ戻っていった。喜久江はお祝いにもらった人形を抱いて眠ってしまい、普段の日よりずっと早くに真紀も育児から開放された。和也は
神様がおられるなら
だから大人は“にしき郷”を飲んで子供にかえる
様々な障害を乗り越えた真紀と和也の幸せなひとときに乾杯して私も「にしき郷」飲んじゃお〜っと!! HOME/ 新着/ 蔵元/ うんちく/ うちの酒/ 味日記/ 商品紹介/ 浅利酒店/ 小説/ 一言/ リンク/ |