夜道がこんなに心細く暗いとは思わなかった。
当然真紀は困りぬいていた。幸い後続の車はなくシンとして住宅街の一角で車を側道にいれようにもハンドルをもつ人と押す人と二人必要だった。
近くの家のベルを押して、誰かに手伝って貰わねばならない、携帯電話はこんな日にかぎって台所のテーブルにおいてきてしまったので、JA○を頼むこともままならない。とりあえず三角標示板を出して歩いていこうと思った矢先、もう一台車が通りかかった。
「どうしました?」運転席の窓があき柔らかい男の声がした。
「うーん、こりゃおかしい」
「JA○に入っていますか、車のトラブルでかけつけてくれるヤツ」
男の携帯電話をうけとり、真紀は車種や車の状況を伝えたあと、車をおしてもらい、道の横に車をよせた。去ろうとする男が通りすがりですからと遠慮したが、連絡先を聞き、JA○に助けられて車を近くのガソリンスタンドまで動かして、修理してもらいやっと家まで戻ってきた。
次の日職場から昨日助けてもらった男に電話してお礼をいった。
遠慮する真紀に退社時間を聞き出して男は送っていくといった。
これがきっかけで夕食を共にしたり、映画をみにいったりする仲になり、三ケ月後には男と女の関係になった。その大槻に妻子がいるとわかったのは、それからまもなくだった。
きっぱり別れたいといった真紀に大槻があわてた。
真剣さにまけて大槻と付き合い続けたが半年たっても1年たってもその兆しはなかった。
不倫など、ドラマか小説の話しだと思っていた真紀は自分が経験するとは信じられない気持ちだった。
和也は明るく元気者だった。若く見えたが、職場の女性たちのウワサでは真紀より年上だった。
暗いドアの前で待っていたのは大槻だった。
その後
しつこかった大槻が真紀から離れていったのはこの日からだった。
真紀は和也にわび今まで話そうとした。和也は静かにいった。
和也はもっぱら日本酒党だった。
「日本酒を冷やしてのむ。生き物だから、杜氏さんが米と麹と水を融合させて造った出来立ての“生”のままを飲むんだ。秋田の地酒でにしき郷ってうまいのがある。とりよせて必ず真紀にのませたい」
そういう和也の目がキラキラしていた。
【あなたへのラブソング】
あなたの傍らにいたほのかな光の夜明け
腕の中でお話ししたあれこれ
ささやきかけてくる優しい声はいつものままで語り口も 言葉も
いつもと少しも変わらないから
目をとじて体をよせて聞いていた この大きな包み込むような
優しさは,温かさは
あなたの総てだった
若い頃に出会いのなかったことも
“今”向き合ってしまう縁も
もう嘆かない
このままを この「時」を
やっと「“今”がいい」とそうささやく
ちょっと感想(浅利 久美子)
ひとつの恋に、終わりを告げると、女性は、もっともっと大きくなれるはず・・・。
ちょっと・・・そこの若者よ・・・君たちの世代にはこういう飲み方をして欲しいのよ。
さて、第二回目は、「真紀の育った町」
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