第四回 外国の歩き方

 ンガポールと日本との時差は1時間,にしき郷を飲んで眠ってしまった真紀は電話の音で起こされた。シンガポール時間で午前4時だった。

シンガポール

「社長の交通事故は、首都高速でおきた。社長は重体だ。さっき手術が終わって集中治療室に入ったところだ。真紀を置き去りにして、すまん。この埋め合わせはするから勘弁してくれ。会社の連中は皆、集まっている。まだ社長の容体は予断を許さない」
「・・・・」
「怒っているよな、わるかったな、どうする?これから、明日戻るか?それとも」
「和也、今、ねてたの、ぼっーーとしているわ」
「そうか、起こしちゃったのか」
「うーーん 社長さん、でも死なずにすんだのね」
「ああ、何とかね、かなりスピードで走っていたらしいよ」
「ふーーん、対向車は?」
「そうじゃない壁に激突なんだ」
「・・・・」
「悪かったな、怒っているだろ」とまた和也は言った。
「もう いいわ、事情が事情だから。もう少し眠るわ」
「じゃ、明日は?」
「まだ決めてない。朝寝坊して、ゆっくり考えるわ」
「そうか、連絡は電話だな、といっても病院は呼び出してくれないだろう。携帯の国際回線の契約はどうか、ちょっと調べておこう、こっちから真紀にかけるのは問題ないんだが」
「わかった」

   起き上がり、スリッパを探して冷蔵庫までいき、またにしき郷を飲む。もう一眠りと思いながらトロトロと眠りに入っていく。

   厚地のカーテンから日がさしこんでいる。

真紀は目をさまし思いっきり伸びをした。さあ今日からどう過ごすか考えねばならない。

 この旅行は、和也に頼りきりで一人で考え、決めていくことなど思いもよらなかった。だが現実は自分で探して決めねばならない。和也を責めることも頭をよぎったがやめた。部屋のマガジンラックに観光案内が入っているので、英語ばかりだが手にとってみる。こんなことならガイドブックをナリタで買ってくればよかったと思うが後悔はしないことにする。

   冷蔵庫から、コーラを出し、飲みながらページをくる。和也とシンガポールについて会話したことを記憶の底からひっぱりだす。
和也はマメで、休暇がとれるから旅行にいく話しになった時、絶対海外旅行といいはる真紀のために旅行者のパンフなどを集めてきて、プランをたててくれた。真紀は側でごちゃごちゃ言っていただけだったのを反省した。

シンガポール

   シンガポールの地図をみつける。泊まっているホテルの位置を確かめる。オプションツアーはホテルと契約している旅行社を介して決めようと和也が言っていたのを思い出す。
 考えがまとまらないが今日はとりあえず、市内を歩いてみようと決める。

 一人ごとを真紀はいってみる
「ねぇどこを歩く?真紀」
自分で答える
「東京なら渋谷、銀座、新宿とすぐに決めるわ」
「そうねぇ、シンガポールの銀座はどこかな?」
写真や地図を見比べてOrchard Rdを見つける。このホテルからだとタクシーか地下鉄らしい。
「地下鉄は安全かしらね」
「フロントで聞いてみましょう」

 メモを書く。この人誰かな?Raffles・・・この人、港に銅像があるらしい、これも質問だわと考える。ガイドブックにRaffles のことが載っている。どうやらシンガポールにとっては重要人物らしい。この人の名前でホテルもあるわ、ここに行ってみようかな? ホテルなら、街に出るより安心かもしれない。
このホテルは近いらしい。
だんだん骨格ができてきて、持ち物をそろえて真紀は街へと出発した。その日は、ラッフルズホテルにいき、その後、買い物をするためオーチャード通りへいくことにする。

 明日の深夜便でかえることを決めホテルのフロントで、飛行機を予約した。明日は午前中、蘭の花をみにいき、午後は免税店にいってお土産を買い、夕食はゆっくりとり、飛行機に乗ろうと考えた。

   市内の銀行でシンガポールドルに換金してみる。パソコンがズラリと並び、オペレータが事務をしている。みんな私服だ。

 ラッフルズホテルをめざす。真紀が泊まったホテルからさほど時間がかからず到着した. 南国特有の木々に囲まれた白壁の建物で、エキゾチックだ。建物は回廊に囲まれていて、ブランド店が整然と並んでいる。回廊にたつと涼しい風がふきぬけていった。
伝統あるこのホテルに宿泊した有名人のサインやサマセットモームの直筆が残されていた。サマセットモームは、「月と六ペンス」や「雨」など数々の短編をこのホテルの部屋で書いたという。

   和也と必ずもう一度やってこよう。このラッフルズホテルの話しをしてみたい。ホテルグッズのコーナーでカードやコースターを買い、ブランド品の店をのぞいた。英国の陶器の店もある。ハンドバックや服や宝石より真紀は陶器をみて歩くことが楽しい。もって帰ることを考えて、和也のタイピンとお揃いでヘンダントヘッドを買った。

【女も一人で・・・・】

  女は一人にしておくべきではなく
 男が守るものと
  決めたのはきっと男だろう

 一人きりで試すことを女もしてみれば
 それなり果たせることを女自身もしらないのかもしれない
  危険? 傷つきやすい? すぐに泣いてしまう?
  全部あたっていそうだけれど
  少し背伸びして 自分の足で 歩いてみよう
   重い物は運べないし 殴り合いなど無理だけれど
    話して考えて
    道具を使って
    用心深く 進めばいい

   冒険してみれば新しい女になれそうだ

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