指向角中心

 はてさて、FBSR会メーリングリストでも話題にし、あるいはまたかという方もおられよう。しかし、私の最近のスピーカーセッティングアプローチにおいてきわめて重要な要素を孕むので、ここできっちり問題を考えておきたい。

 現代SRの局面で用いられるスピーカーはほとんどが定指向性ホーンと呼ばれるものを採用しており、その理論を低周波領域にまで押し広げたものも出てきているようである。もちろんマルチスピーカーシステムにおいては使用周波数帯域毎に異なる指向角のユニットが採用されていることも珍しくない。が、音質上明瞭度を確保する上でどうしても、中高音域には定指向性ホーンを用いたいとは、殆どのオペレータが考えるところであろう。

 一般に定指向性を持つスピーカーシステムのカタログには指向角が明示されている。おそらくその測定方法は1〜3メートル程度離れた所にマイクロホンを設置し、中心にセットされたスピーカーを微小角ずつ回転させながら測定するというものではないかと想像する。(スピーカーメーカーの関係者の方に正確なところを伺いたい)

 確かに、この方法で正確な測定は出来る。が、それは、その距離に於けるエネルギー分布を示しているに過ぎず、実際に正確に指向角なるものを示しているとは言い難い。つまり、その距離以外ではどうかという点については、大変に心もとない。音源としてのスピーカーが有意なサイズを持っている、つまり点音源ではないと言う点からも、より離れた点数箇所をも測定し、実際のサービスエリアを確定するに必要な指向角を得、かつそこから逆算した、仮想指向中心のようなものを得る必要があると思われるがいかがであろうか。

 通常、アレイを組む場合、隣接するユニット同士の干渉で有効指向角が減少すると言う現象が起こる。これはもちろん積極的に利用する場合もあるが、一般に周波数特性にコムフィルターを生成させることから回避できればしたい現象ではある。が指向角をうまくコントロールできれば、コムフィルターの生成を限界まで回避しつつより広いサービスエリアを確保できると思われる。そういう意味からも仮想指向角中心については、是非とも測定項目のスタンダードとして定義していただければと希望する。まぁ、高音圧を要求する大規模アレイではそんなことも言ってられないが、小規模アレイ程、その影響は大きい。特に、日本において大変に多い1,000席程度の小屋では切実な問題となるのではないかと思われるが・・


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