小児科通信 平成13年9月号

夏休みが終わり、学校も始まって一段落する頃、たまりたまっていた疲れが出てきて体調を崩す事があります。朝晩涼しくなって来ますから、服装やお布団にも気をつけて。

今月、僕は遅い夏休みをもらいます。日本人って休む事に後ろめたさを感じてダメね。でも普段休まず働いてるし、この機会に思い切って休みます。ご迷惑かけます。(文責:渡部泰弘)

 

「今朝から熱があるんです」

午後の予防接種や慢性外来と違って、午前中の一般外来はいわゆる「風邪ひき」の子供達が来ます。当然、熱のある子も来ます。家族の方にとって発熱は心配な症状ですから「熱があって」という訴えは比較的多いのですが、こんな場合、僕もどうすればいいか悩む事があります。

「今朝から熱があるんです」「どこまで上がりました?」「37度8分」「何か他の症状は?」「何にも」「朝ご飯は?」「ちゃんと食べました」「………」

どの時点で外来に連れて来るか

上記のようなお話を聞いて、この子は37度台の発熱以外には症状が無くて、まぁ元気な状態なのだなと判断します。そこで診察して何かはっきりした病気のサインがあればいいのですが、実はこういった場合、胸の音はきれい・のどは赤くない・痛いところもないという事が多いのです。解熱剤を使うような高熱でもないし、「特に悪いところも無さそうだし、今は特別お薬使う必要なさそうです。何日か見ていて他の症状が出てくればまた診察しましょう、それまで家で観察の期間にしませんか」と言って(忙しいと実際ここまで丁寧にお話ししてないかも知れませんが)帰す事があります。

こういう時、連れてきた家族の方の心の中には「せっかく受付して待っていたのに、何か薬くれればいいのに…」と思う気持ちがあるかも知れません。混んでいて待ち時間が長かったり、仕事を休んで連れてきたりしていれば、なおさらでしょう。けれど、我々医者の立場からすれば不必要な薬をわざわざ出す事も無いし、実は「もうちょっと家で観察して判断してからでも良かったのに」と思うことが多いです。

どの時点で外来に連れて来るかという事に関しては、答えがありません。というのも、家族の方が心配でも僕らから見ると大丈夫な事もあるし、その逆の事もあるからで、家族の方がそこまで正確に判断する事は難しいと思うのです。自分の体の事であればある程度の判断も出来るでしょうけれど、小児科の場合は他の誰かが判断しなければいけませんし、誰かが病院に連れて来なければいけません。だからなるべく「無駄な通院(言葉は悪いですが)」を防ぐために、次のような場合はすぐ病院に連れて行くかどうか、ちょっと考えてみてもいいかも知れません。

・ 症状が始まってまだ間もない時、しかも症状が軽い時

今朝からちょっと熱っぽい、急に一回吐いた、なんだか食が進まないなどの時、初めて子どもを持ったお母さんなら経験がなければ心配になるのは当たり前です。まずは子どもの顔を見てください。表情のいい元気な顔ならちょっと様子を見ていても大丈夫。それでも心配ならば自分だけで考えないで、よく知っている先輩ママに聞いてみてはどうでしょう? ただし、あまり様子を知らない人だと「自分が要らぬ事を言ってなにかあっては大変」と思って「医者に連れて行ってみたら」と言われるだけです。まして遠くに住むお祖父ちゃんお祖母ちゃんは孫の心配に関しては世界一ですから、電話で相談しても「そんなの早く医者に連れて行きなさい」と言われるだけです(遠くに住むお祖父ちゃんお祖母ちゃん、ごめんなさいね)。

・保育園・幼稚園からのお迎え連絡

「37度5分あるので」「発疹が出ているので」と迎えに来るよう家族の方へ連絡が入る事は時々ありますね。「お医者さんに診てもらって下さい」と言われる事もあるよう(?)ですが、子どもの様子がいつもと違う時、園の先生達は立場上「家族に医療機関への受診を勧める」のであって、必ずしも受診が必要かどうかを判断しているのではありません(もちろん経験のある先生の中には「今日のこの子はこういう状態だから、今日の内に病院に連れて行った方がいいですよ」と的確にアドバイス下さる方もいます)。連れて帰って家で休ませるか、病院に連れて来るか、やはり子どもの顔を見て決めていいと思います。

午後になってから、保育園に迎えに行った足でダイレクトに連絡無しで外来に来ないでください(これはお願い)。午後は風邪ひき以外の子のための時間(慢性外来・予防接種・乳児検診など)です。

 

こんな時は、まず家で観察しましょう

少なくとも、食事が(あるいは水分が)ちゃんと摂れる状態ならたとえ高熱でも大きな心配ありません。特に、他の症状が無くてちょっと熱っぽい程度なら、まず病院に連れて来ずに家で休ませましょう。食事は消化のよいもの(具体的にはよく煮込んだもの、油気の多くないもの)をゆっくり時間をかけて食べさせて。食べたいから、好きだからと言ってもスナック菓子・ファーストフード・揚げ物・炭酸飲料などは控えてください。また、吐いたり食が進まない時は一眠りすると落ち着く事が多いです。お布団敷いて寝せて下さい。38.5度以上の高い熱があって元気のない状態なら、家にある解熱剤の座薬を(もちろん体重に合ったもの)使ってもいいでしょう。

「家で休ませる」というのは、「家で遊ばせる」のではありません。具合が悪ければゲームもオモチャもちょっとお休みして下さい。退屈するかも知れない子は、家族の方がつきあって絵本でも読んであげてはどうでしょう(逆にじっとしていられないぐらい元気な状態ならば、わざわざ家で休ませる必要も無いでしょう)。一晩たっても症状が収まらないとか、新しい症状が出てきた時は、その時点で受診して下さい。日中我慢してわざわざ夜間救急に来るのは、小児科医もいないし薬も無いから損ですよ。一晩見た上で、翌日の外来へどうぞ。

それから、ここに書いたのはあくまで普段元気な子の話です。基礎疾患のある(元々に病気を持っている)子、及び3ヶ月未満の赤ちゃんの場合は、具合の悪い時には早め早めの受診をお願いします。