小児科通信 平成13年7月号

暑い季節に突入です。小児科ではこの季節ならではの夏かぜ(ヘルパンギーナ・プール熱など)やとびひ(伝染性膿痂疹)が流行する事が多くなります。とびひは汗と汚れが天敵。こまめにシャワーを。(文責:渡部泰弘)

医療のコンビニ化?

コンビニが普及してからと言うもの便利になって、夜中に買い物が出来るというのが当たり前の感覚になっていますが、よく考えれば20年前には考えられなかった事ですね。                                   医療に対しても、当然同じ感覚で便利さを求めたくなりますね。つまり、いつでも待たずに診察を受けたい(僕もそう思います)。それが出来れば本当は良いのかも知れないけれど、現実にはそう出来ない理由があります。              よく、救急当直のお医者さんのぼやきで「病院はコンビニじゃないんだから」というセリフを聞く事があります。「夜中に来て、4日前から腰が痛くて何か検査して欲しいって言われてもなぁ」と。と言う訳で救急のお話。

救急外来=夜間外来?

病院の救急当直というのは、勤務医の1〜2名が自分の科の専門に関わらず、当番で夜間(または休日)救急に来た患者さんを診るという体制になっています。都心の大きな病院では毎日小児科医が常駐している所もあるようですが、県内にはそういう病院はありません。その当直医が判断して専門医を呼ぶ必要がある場合、連絡をしてそれぞれの科の医者が来る事になっています。その必要がない場合は、救急室で出来る処置をして必要最低限の薬を出して、それぞれの科の外来へあらためて受診してもらうようにお話ししています。それは、医療が良くも悪くも細分化されているために、僕ら医者は他の科の事がよく分からないので、正確な判断をしたり適切な薬を出したり出来ないからなのです。だから本当は、夜中に病院に来なきゃいけない程具合が悪くなければ、ちょっと待って翌日の外来に来た方がいいのです。本当は、ね。でも現実には「仕事があって日中は来れないから」という方がかなり多いですね。小児科でも「明日連れて来る人がいなくて」という方も見られます。それも分かるんだけど・・・具合が悪いときにきちんと休みが取れて、病院に安心していけるという社会にならないといけないのだろうと思います。

じゃぁ病院が夜やればいいんじゃないの?という話が出てくるのですが、現実には出来ません。その一番の理由が医療スタッフの数です。コンビニが24時間開けていられるのは、夜中はアルバイトで間に合うからです。病院はそうは行きません。夜間普通に診療できる体制を組むには、医者だけでなく看護婦・検査技師・事務などの人手が圧倒的に足りないのです。今ですら病棟の看護婦さん達は準夜・深夜の夜勤が多ければ月に10回もありますし、検査技師さん達も当番制になっていて、夜間の緊急検査があれば呼ばれます。レントゲン技師さんは当番で泊まっています。現在の救急体制ですら、病院にとってもぎりぎりの所でやっているのだと思います。その点もどうかご理解いただければと思います。でも、救急から呼ばれればいつでもきちんと診に行きますからね(それは当たり前)。

それから、待ち時間の事

第2・第4土曜は外来が休みですから、その翌週の月曜はいつもより患者さんの受付が多くなります。インフルエンザの流行時期などは月曜午前の受付だけで100人を越えることも何度かあります。そういう時にいつも思うのは、受付してから診察までずいぶん待たせてしまってるんだろうなぁ、という事。マスコミなどでよく「病院への不満」なんて記事があると「待ち時間が長い」と決まって書かれますよね。

外来での目標の一つは「あまり待たせず早く帰ってもらう事」だと思っているのですが、なかなか思うようには行きません。僕の診察のスピードは、余裕を持って出来るのが1時間あたり15人程度、混んでくるとスピードアップしますがそれでも20人程度(スタッフの間では冗談めかして「時速20人」と言いますが)です。仮に80人受付したとすれば、月曜8時半から外来をスタートして「時速15人」では午後1時50分になってしまい、1時からの病棟回診など午後の仕事に支障があるのでどうしても急いでしまいます。けれど「時速20人」(ちょうど「3分診療」なのですが)の時には家での注意点や薬の説明など「もう一言お話ししたい事」を言う余裕がありません。本当はあまり良いことでは無いなと思いながら急いでいます。                                                         予約制に出来ればいいのですが、小児科は具合が悪くなって受診しますから前もっての予約が難しいですね。一番現実的なのは「当日に電話で大まかな時間を予約する」という方法ですが、それに専念するスタッフが一人いなければ出来ません。今の体制ではちょっと無理です。

外来では待っている方の中で受付が早い順番にお呼びします。呼ばれたときにいらっしゃらない場合はその次になってしまいます。また、特に具合の悪い子は順番を飛び越して診察する場合もあります。ご了承下さい。

大まかな目安としては下記のようになると思います。

8:30

9:00

10:00

11:00

12:00

13:00

混んだ日

1〜

10〜29

30〜49

50〜69

70〜89

90〜

普通の日

   1〜

5〜19

20〜34

35〜49

50〜64

65〜

注:【混んだ日】混んでいる日に8時半から始めて「時速20人」で診察した場合

【普通の日】混んでいない日に8時45分から始めて「時速15人」で診察した場合

現実にはこの中間くらいになる事が多いです。なるべく待ち時間を少なくする工夫として、脱がせやすい服装にする、他の病院でもらった薬があったら実物や内容を書いた紙を持ってくるなど、ご協力下さいね。