小児科通信 平成13年2月号
寒い日が続きますね。外に出るときはしっかり防寒対策を。暖房のある所ではこまめに防寒着を脱がせて下さいね。(文責:小児科 渡部泰弘)
風邪ですか?
外来ではなるべく分かりやすく説明する事を心がけていますが、医学用語を使わない正確な説明はけっこう難しいもので、「風邪ですか?」「風邪です」なんていう会話が外来ではよく聞かれますよね。 この「風邪」という言葉はかなりくせ者です。
「風邪」=「咳・鼻水・発熱」?
「風邪」とは病気の名前ではなくて、あくまで症状に対しての名前です。一般的には「咳・鼻水・発熱」ぐらいが「風邪」と言われますが、咳・鼻水・熱という「風邪症状」でもレントゲン写真を撮ってみると肺炎、という事はよくあります。一般の感覚では「肺炎と風邪は違うんじゃない?」と思うかもしれませんが、このように実際には「風邪」という言葉の中には上気道炎から気管支炎・肺炎までが含まれてしまう場合があるのです。 じゃぁ、どう違うの? という質問に対しては、 上気道炎:鼻腔から咽頭口部を含む部位の炎症。発熱・咳・鼻汁・咽頭痛など。 気管支炎:気管支の炎症。咳を中心とするが発熱も認め、多くは上気道炎を合併する。 肺 炎:発熱・咳・呼吸困難を主症状とし、胸部写真で浸潤影が認められる。 (小児感染症治療マニュアル(医学書院)より) というのが教科書的な答えですが、大ざっぱに言えば「レントゲンで影があれば肺炎、でも他には区別がつきません」というのが現実です。だって、外来では気管支の中を直接見ている訳じゃありませんから。
肺炎だったら入院ですか?
「肺炎」という言葉は逆に「重症」「入院が必要」と受け取られる事が多いです。でも、それも必ずしも正しくはありません。小学生くらいの比較的年長の子に多く見られる肺炎で、マイコプラズマという病原体による肺炎があります。乾いた咳が続きますが本人は比較的元気で、聴診器で胸の音を聞いてもキレイなのですが、一方でレントゲン写真を撮るとはっきり肺炎があるという特徴があります。特定の種類の抗生物質が効きますが自然に治る可能性も高く、後からたまたま検査で「あら、前回の風邪はマイコプラズマだったのね」と気が付くこともあるぐらいです。ですから、たとえ肺炎でも元気で状態が良ければ入院はしません。もちろんマイコプラズマ肺炎でも入院が必要なこともありますし、他の肺炎でも入院せず外来でがんばる事もあります。
おなかの風邪?
お医者さんによっても言葉の使い方が違う、というのが医療の難しいところです。「下痢・嘔吐・腹痛・食欲不振」という症状の急性腸炎を「おなかの風邪ですね」と説明する事もあります。そうすると大抵の方は「そうか、おなかの風邪なのね」と納得してしまいます。この言葉は決して医学的ではないのですが現実には外来で使われる事が多いです。
こうして見ると「風邪」という言葉はつかみ所のない言葉だというのが分かっていただけるかと思います。だから「風邪=軽症」とは考えず、「風邪」という言葉にだまされず、やはりその子の状態はどうかという事を第一に考えるべきだと思うのです。
小児科渡部のお願い
「夕方熱上げて電話したば診てけだっけよ。待だねくて良かったっけ」 「あ、それだば、うちも夕方行こっかな。朝だばうんと待だねばねもの」 それはダメ!午前中に来てね というお願い。
救急車を呼ぶような、ホントに具合が悪いのは別ですよ。時間に関係なくいつでも診ます。でも、受付時間を決めているのはいろいろ理由があるんです。 まず、風邪ひき以外の子に風邪をうつさないため。 午後は予防接種や慢性外来など、感染症(いわゆる風邪ひきやうつる病気)以外の子のための時間です。その子達には風邪をうつす事無く必要な診察や処置を受けさせたいと思います。「予防接種に行ったら風邪うつされた」なんて嫌でしょう? それから、検査や事務手続き上の問題。 夕方遅い時間は時間のかかる検査は出来ません。それに受付や処方箋を出すコンピュータは5:15で止まってしまい、それを過ぎると必要な薬が出せなくなります。 何より、時間を守って受付して待っている子たちに申し訳なくて。 風邪の流行期や休み明け月曜日などは、受付をしてから1時間以上お待たせする事も多いと思います。ホント、申し訳なく思っていますが僕もどんなに頑張っても1時間で20人診るのがやっと。それ以上ぶっ飛ばすと「医療の質」が落ちてしまいます。皆さん長くは待ちたくないけれど、仕方が無いから待っていただいています。 一方、子供は急に熱が出たり具合が悪くなったりする事があります。そういう時は外来に電話をしていただくと、状況を見て「何時頃来て下さい」とお返事します。その時は確かにあまり待たずに診察できます。けれど、午前中に来れるのにそこをねらって来るのはあまり望ましいことではありません。子どもは多少の熱でも元気な場合は大きな心配無いですよ。次の日まで待てそうな場合は午前中に来て下さいね。もちろん、具合の悪い場合はいつでも連絡を下さい。