英雄達の「影」。
マタ・ヌイ――“世界”――の創造からずっと昔。
現在「グラトリアン」と呼ばれている大きな体躯を持つその者達は、
元々はスフェリアス・マグナという惑星に住んでいた。
スフェリアス・マグナ。
それは、マタ・ヌイを創造した存在――偉大なる神々――の住んでいた惑星だった。
そして、グラトリアンとアゴリもまた、その惑星に住んでいた種族であった。
全ての始まり。それは、ある日突然起こった。
ある場所の地表から、銀色の液体のような物質が湧き出してきたのである。
元々その物質はこの惑星の核(惑星の中心部の構造のこと。地球にも実在する)に存在していたのだが、
何かが原因で、その物質が惑星内部から地表へ漏れ出てしまったのだ。
調査員は対象を発見、分析に取りかかる。
しかし、彼らがその物質に触った瞬間、彼らは跡形もなく破壊され、その命を落とした。
それもそのはず、その物質の正体は、エネルギー・プロトデルミスであったからである。
エネルギー・プロトデルミスの正体。
それは、意思を持つ金属物質的生命体。
その能力は、それ自身が選んだ対象と接触する事で、その対象を劇的に変化、
もしくは破壊し、殺害するというものだった。
ちなみに、これは現在バイオニクルの世界でも確認されている。
恐るべきエネルギーを持ったその生命体を殲滅するため、
偉大なる神々は兵士達をそれと交戦させた。
そう。
この時の兵士達が、現在「グラトリアン」と呼ばれている種族の者達であったのだ。
グラトリアンがエネルギー・プロトデルミスと交戦している間に、
偉大なる神々は調査を進め続けた。
そしてその結果、エネルギー・プロトデルミスは、少しずつ惑星を破壊しはじめているという事を発見した。
研究の結果、神々は物質を無力化する方法を発見。
無力化され、「素材」として完成したその物質を、神々はただ「プロトデルミス」と呼んだ。
神々は、「惑星の破壊を止めるため」、この「素材」を利用した巨大ロボットの創造を決意する。
内部に小さな世界を設計し、アゴリをベースとした種族「マトラン」を創造して、主な住人とした。
そして、そのとっておきの素材を組み込んで完成した創造物は、
自らの体内に沢山の生命を宿して、宇宙へと旅立っていった。
作品名「マタ・ヌイ 」。神々にとって、最高傑作であった。
しかし、時はもう既に遅かった。
間に合わず、とうとうスフェリアス・マグナは三つに断裂された。
神々は脱出し、
グラトリアンとアゴリは、その三つのうち最も大きな部分に取り残されてしまったのだった。
故郷から取り残されたグラトリアンとアゴリ達は、スフェリアス・マグナだったそこに残された。
ゼロからのスタートを決意した彼らは、そこから長い時をかけて独自の文化を創り出していった。
しかし。
そこは、既に崩壊した世界。
資源の入手が、不可能だった。
それはズバリ、アゴリとグラトリアン達の命の危機を意味していた。
オアシスが見つかれば、その水を求めて。
家畜として飼える動物があれば、その肉を求めて。
その度、殺し合いが起きた。
そして、次々と起こる無駄な犠牲を阻止するべく、数人のアゴリとグラトリアンはとある機関を結成。
その機関によって、「アリーナ・マッチ」と呼ばれる制度が作られる。
それぞれの部族のグラトリアンがアリーナと呼ばれる闘技場にて対戦し、
勝利した方の部族に資源の所有権を認める、というものであった。
そして、実際に戦ったグラトリアンにも、部族から給料として配給が来るというシステムである。
こうして、バラ・マグナの上で、互いの生死を賭けた戦いが行われることとなった。
グラトリアン達は、己の持つ能力を最大限に発揮し、戦う。
勝利の為。栄光の為。・・・そして、更なる力の為。
グラトリアンは、トーアとは異なりエレメンタル・パワーを持たない。
また、彼らが装着しているカノイのようなものは、頭部への衝撃を和らげるヘルメットである。
その為、彼らは戦闘では己の持つ身体能力のみを駆使する。
ちなみに、偉大なる神々によって、グラトリアンをベースとして創造された存在がトーアである。
Gresh/グレッシュ
武器:リーフ・シールド、ソーナックス・ランチャー
密林部族のグラトリアン。
まだ年齢的にも若いが、その実力は他のグラトリアンに既に引けをとらない。
また、あらゆる武器の使用方法にも精通している。
「俺たちは、誰かの命が助かるなら金なんか要らないよ」
「俺はアゴリよりも強いんだ。つまりそれは、俺がアゴリを守らなきゃならないって事にならないかい?」
「降参・・・か。それは、俺にとっては生きる意味をなくすというだな」
金よりも命を重視し、アリーナ・マッチ以外でも危険が迫ったアゴリを救出し、代金は決して要求しない。
戦闘に関しては、過去に成功した戦術――経験――に頼りすぎる節がある。
グレッシュも自身のこの傾向に悩んでおり、実際タリックスとの親善試合では動きを見破られ、敗北している。
Skrall/スクラール
武器:ロック・ソード、ソーブレード・シールド、ソーナックス・ランチャー
岩種族のグラトリアンの総称。個人名ではない。
そもそもスクラール族は個人名という概念を持っておらず、スクラール族の長「トゥーマ」のみが命名権を持つ。
かなり戦闘能力の高い種族であり、対戦相手は高確率で敗北する。
「我らは戦う。我らは勝つ。我らは奪う。・・・我らは、スクラールだ!!」
「俺は、誰も恐れない」
「何故、俺たちはここにいるんだ?スクラールは、闇に隠れたりはしないぜ?」
アリーナ・マッチでの連勝により、彼らは非常に尊大で傲慢な性格となった。
後に集団で来襲し、アリーナを占拠してしまっている。
Tarix/タリックス
武器:ウォーター・ブレード、ソーナックス・ランチャー
水部族のグラトリアン。
グラトリアンの現チャンピオンであり、戦闘に関してはかなりのカリスマ。
先述のアリーナ・マッチ制度を制定した機関のメンバーの一人だった。
「私は、理性と優雅さを捨てて戦うんだ」
「勝利に導く秘訣は、敗者が冒す失敗を常に物語っている」
戦闘では鬼気迫る攻撃を繰り出し、相手を翻弄し圧倒する。
また、バラ・マグナの伝統を尊重しており、非常に公平な性格をしている。
Strakk/ストラック
武器:アイス・アックス、ソーナックス・ランチャー
氷部族のグラトリアン。
金にがめつい性格であり、無慈悲且つ汚い性格をしている。
「俺は、タダじゃ戦わねぇぜ」
「・・・俺の武器が欲しいか?高ぇぜ?」
何故か、金にあまり興味のないグレッシュ、タリックスと行動を共にすることが多く、恐らくは腐れ縁。
しかし絵に描いたような最低な奴ではないようで、
先述のスクラールの襲撃の際、アゴリ達が逃げ切れるまで他のグラトリアン達と共に
スクラール族と戦闘を繰り広げるという一面も見られた。
Malum/マルム
武器:フレイム・クロー、ソーナックス・ランチャー
元炎部族のグラトリアン。現在は砂部族に所属している。
恐るべき力を秘めており、戦闘ではそのパワーを生かした戦法を得意とする。
「文化に囚われた社会は、俺にとってはつまらないモノだ」
「もし今、お前が此所を立ち去ったら・・・葬ってやる」
命に対する執着をあまり持たず、死をまるで恐れていない。
また、彼曰く、自分は今現在生きることに執着してまで失いたくないものを持っては居ないという。
しかしヴォロックスの群れのリーダーとなって行動していることから、彼が「何か」を見出した事は見て取れる。
普段は落ち着いた性格をしてはいるが、戦闘になると血が騒ぎ、興奮を抑えきれなくなる悪癖がある。
以前試合にて相手をこの悪癖で殺害しかけたことで部族を追放されている。
Vorox/ヴォロックス
武器:ソード、スティンガー・テイル、ソーナックス・ランチャー
砂部族のグラトリアンの総称。
彼ら自身の言葉をよく聞くと、個々に名前があるらしい。
前述の「大災害」という謎の現象で人ではないモノへと変貌してしまっており、その姿は最早獣。
つま先には鋭いクローが生え、鋭い針を備えた尾を持ち、その眼は常に血走っているという異様な姿である。
僅かに知能は残っているようで、上手くはないが言葉を話せる。(しかし滅多に話すこともない)
ゼスクと呼ばれる、同じように獣人となった砂部族のアゴリと共生しており、
そのゼスクらが身体から分泌する麝香の香りがする泥で、敵味方かを判断している。
少数の群れを作って行動しており、群れには通常「一匹」のリーダーが存在する。
リーダーはどうやら強さによって決定されるらしく、現にマルムは前リーダーを殺害してリーダーとなった。
(おそらくマルムも麝香の泥を使っていると思われる)
Certavus/セタヴス
武器:スパイク・ソード、ソーナックス・ランチャー
氷部族のグラトリアン。
タリックスと同じく元機関のメンバーであったが、既に死亡している。
「戦士の最強の武器は、心だ。
心は、どんな剣よりも強い刃となり、またどんな盾よりも強い守りとなる」
その実力はかなり高く、今でも多くのグラトリアン達によって尊敬されている。
そして数千もの戦いを制し、グレート・トーナメントでは何度も優勝するという輝かしい経歴も誇っていた。
また非常に賢く、いつ自身の力と知力を使うべきかをも弁えていた。
一冊の本を書き残したことが解っており、内容は戦い方についての秘訣、考え方である。
この本を、沢山あるアリーナの何処かに隠したらしく、探すグラトリアンも少なくない。
ちなみにこの本を実際に目にした経験があるグラトリアンは、解っているものではグレッシュのみである。
(彼はこの本を「探す課程」でヴォロックスに襲われ、新しい戦術を試すことを実践し、学んだ。
後にアゴリのベリックスが本を見つけて手渡すが、彼は「自分の弱点を既に学んだ」として受け取らなかった)
多くの者達によって敬われ、親しまれていた彼。
しかし、彼は後に病という難敵に直面。ついにその激しくも儚かった命を散らし、この世を去った。