武器が弾かれ、一撃を加える音が、決闘の時間の到来を示していた。
通常のプログラムが全て終了し、次は・・・・・決戦。
戦い好きな傭兵と、その連れに恋をした青年の決戦。
ファイナが見守る中、
二人の男が前に出る。
片方の男の武器は・・・・・・彼愛用の薙刀。
もう片方の男の武器は・・・二連刃の大鎌。
観客が、口笛を吹き、拍手をし、宴を喜んだ。
ついには審査員席までもがドンチャン騒ぎだった。
審判の「構え!」の掛け声で、観客達が静まる。
例えるならそう、嵐の前の静けさ。
あまりにも、不気味なくらいに、何も聞こえなかった。
そして。
「始めッ!!!!!!」
審判の、掛け声。
それを耳にした瞬間に、二人の男が武器を振りかざし、相手に斬りつける。
しかし、双方の武器は金属音を鳴らし、互いに弾き飛ばす。
本当なら、本物の武器での決闘など、審査員、観客達の誰もが認めるはずがなかった。
でも、今日(いま)は違った。
観客も、審査員も、そして審判さえも、それを認めて騒いでいる。
この決戦はまるで決められていた事だったかのように。
「うぉぉりゃああぁぁぁッ!!!!!!」
「ハアアァァァァァッ!!!!!!!」
キィン!
キィィン!
ガキィィン!
金属同士が打ち合い、はじき返される乾いた音。
その中で、二人の男は何故か笑っていた。
「ほらほら、何をしてるんだい!?容赦せずに斬りつけっぞ!」
「そうですか!面白いです!私も容赦しませんよ!?」
武器が重なり合い、火花を放ち、二人の笑顔が舞う。
火花が散る光景は、まるで琥珀色に輝く花びらのようだった。
「楽しいなぁ、ヴェイルさんよぉ!!!!!!」
「ええ、とってもですね!」
武器を振りかざし、相手に本気で斬りつける。
本気なのは当たり前。これは決戦なのだから。
その様子を、ファイナはじっと見つめている。
できれば、青年に勝って欲しい。そう願って。
突拍子も無い出会いだったけれど、今はそうなる事を願っている自分が居る。
そんな自分が、滑稽で少し笑えるファイナ。
互いの武器が激突し、そのまま互いが押し合った。
少しでも力負けすれば、自分側に武器が迫ってくる。
「・・・・・・こんなに楽しいのは、久しぶりだよ!」
「そうですか。それは何よりです!」
「・・・・・アンタも楽しいだろ!?」
「・・・ご名答です!!!!!」
キィン!
互いが仰け反り合う。
なんて楽しいんだろう。
なんて血が騒ぐんだろう。
互いに、そう思っていた。
そして、互いに分かっていた。
おそらく、観客達も、そう思っているに違いない。
なんて楽しそうなんだろう、あの戦いに混ざって俺も戦いたい・・・・・!!!!!!!!!!!
武器を打ち鳴らし、体を舞うように捻り、そして再び弾き合う。
「・・・・・・アンタ、結構強いじゃねえかよ・・・・気に入ったぜ・・・・!」
「・・・・私としては、ファイナさんに気に入られたいですがね!」
再び回り出す決戦の円舞曲。
誰もがその戦いを見守っていた。
誰もがその戦いに心を奪われていた。
誰もがその戦いを止めようとはしなかった。
そして誰もが、その戦いに自分も参加したいとさえ感じていた。
この決戦は決着を付けるのが目的だった。
なのに、今戦っている二人は、その事を忘れていた。
むしろ、永遠にこの楽しい戦いを続けていたいとさえ思っていた。
しかし、どんな戦いもいつかは決着が着く。
もちろんこの決戦も例外では無かった。
汗だくになったロサダが言う。
「・・・・・・・そろそろ・・・・・ケリ、付けるか」
「・・・・・・・ええ、同感です」
互いに距離を取り、武器を構える。
舞台は、大熱狂の嵐に包まれていた。
観客達は、思い思いに絶叫しながら、口笛を吹き、腕を振り上げ、応援の言葉を贈る。
ファイナは、二人に心配する感情すら起こらなかった。
お互い、武器を持って斬り合っている。一撃でも食らえば大怪我は免れないはずなのに。
・・・・・お互いが、楽しそうに笑っている為だろうか。
ほぼ殺し合いに近いはずなのに、緊張感がまったく無い。
まるで、スポーツを観戦してて興奮しているような感じだった。
二人が、互いに武器を構えたまま突進していく。
それが、この決戦の最後だった。
「だあぁぁぁりゃああぁぁぁぁッ!!!!!!!!!」
「せいやああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
その瞬間、激しい金属音が辺り一面に鳴り響き、片方の武器が空に舞った。
「勝負」完