アルバ・カテルが襲撃されたあの日から、本部の警備は当然ながら強固になっていた。
本部への扉は新しいパスワードが設定され、エクシム達は知る由もない筈。
オマケに本部内にも非常用設備が多数配置された。
更に、対ダーカー用に開発された新兵器も配属された。
正式名称「D-B 576」。歩兵携帯が可能な射撃武器で、弾丸は射撃から2秒後に爆発する仕組みがある。
爆発といっても小さいものの、それでもダーカーを体内から破裂されるのに十分な威力だ。
本部はこれでまずは安全だろう。
ロサダ達は荷物を整えると、本部を後にした。
ダーカーはまだ大陸中に存在している。
ヴェイルを残して全員が覚醒した事も心強かった。
「私はまだ覚醒できていないようですね」
本部から大分離れたところで、ヴェイルが口を開いた。
その言葉にロサダが返す。
「アンタは元々ダーカーだからな。覚醒しないのも不思議じゃないんじゃないか?
ま、良い意味にとって喜んどいたらどうだい?」
「・・・そうですね」
軽く微笑むヴェイル。
その笑みは、間違いなくトーアのものだった。
その中で、イオリスだけが。
顔を微笑ませてはいなかった。
「・・・変だな・・・。――――胸騒ぎがする・・・・」
ここは、ジュフ・オキ村。
大陸の辺境に存在する、規模のあまり大きくない村である。
この日も、マトラン達は平和に生活を営んでいた。
それが起こったのは、僅か一瞬の出来事だった。
「悪夢」完