第二十六話「」

メイスとファイナが、目の前に続く銀色の通路を走っていく。
今頃ロサダ達はインヴィディアのある部屋まで辿り着いてるとしても不思議ではない。

走りながら、ファイナがメイスに聞いた。
アルバ・カテル特別上級兵の肩書きを持つ彼ならば、何かを知っている筈。



「・・・・インヴィディア・・・って、何なの?」


その返答に、メイスはすぐに応えてくれた。
まるで時間を惜しんでいるかのように。























「インヴィディアは、破壊兵器なんだよ」



ファイナが走りながらも、その目をパチクリさせている。
彼女が
その言葉の意味が分からない内に、メイスは続けた。




「・・・・大戦。
 
ジャー・アラルの悪夢として知られている大事件。
 その戦争の最中、アルバ・カテルは最後の手段としてあるモノを造っていたんだ。

 打つ手がなくなった時・・・
 敵軍であるネルパ・ロウズを、一気に根こそぎ吹き飛ばす為にね。
 尤も、そこまで危険な事態には陥らなかったから、使われずにあの部屋へで保管されてたんだけどね・・・」

























その言葉を聞いた瞬間。
ファイナは全てを悟った。



まさかあの五人がその破壊兵器を手に入れて、人々を幸せにでもするというのだろうか?
そんな話、馬鹿でも阿呆でも間抜けでも考えない。

ならば、目的はただ一つ。














――――ソレを、“使う”
――――






ファイナの足の運びが更に早くなった。
それに続いて、メイスも走るスピードを上げた。







インヴィディアがあるらしい部屋のドアは、とっくに開いていた。
暗証番号入力の機械もしっかりと解除されている。


部屋に勢い良く飛び入る。
そこには、ロサダ達と・・・ケイム、アミクス、そして・・・







「アンタ・・・生きてたのかよ・・・・」
イオリスが、恐ろしくドスの効いた声で言う。



「ケケケケケケケ・・・・残念ナガラナァ・・・♪」







黒い、龍顔の男。
あのリルスの話では、確かイオリスにトドメを刺された筈。
なのに、実際目の前に立っている。






「・・・・デサ、イオリス君ヨ。
 アンタ、前ヨリ更ニ姿ガ変ワッテルミテェダガ、今度は俺モ負ケネェゼ・・・?ケケケケケ」




・・・?
「前よりも」?


その言葉を聞いて、イオリスが今気付いたかのように驚く。
自身はこの事態だから気付いていなかったのだろう。
当然、ファイナ達にはこの姿があのリルスの言っていた姿だと思っていた。










「・・・・やばい・・・・!!!」



ロサダが、とんでもない声で呟いた。
ファイナ達がその方向に目を向けると――――









台座だった。
その鎖が解かれ、肝心の「何か」が存在しておらず、その台座はもはや役目を果たしていなかった。


それだけで、ロサダ達は何が起こったのかを悟った。




見れば、ケイムにアミクス、あの男。
・・・・
白い、龍顔の奴がいない。






ロサダは、「インヴィディアがどういう代物なのか」を知っていた。
そう。それは、空中を移動する爆弾。


“ソレ”
には小型コンピューターが付いており、
ジャー・アラル大陸の地図のデータが入っている。
そして、コンピューターを操作して「場所」「爆発時の威力」の二つを設定して使用する。




相手は手加減なんかしてくれない。
無情にも、爆発時の威力が「最大規模」に設定されているのは明白だった。

そして、場所。
このアルバ・カテルの基地なんぞ、ダーカー数十匹でこの有様。
ならば、わざわざそんな兵器を使わんでもダーカーさえ居ればこんな基地ぐらいすぐに潰せる。


ならば狙うのは・・・・























沢山の村を含めた、
この大陸の広範囲・・・・!!!!!!!








一瞬でその結論に到達したロサダは、すぐに部屋から出ようとする。
しかし、あの龍顔の男が立ち塞がる。




いきなり。
龍顔の男の胸に斬撃。
よろめき、体勢を立て直そうとしている。






「早く行け!
 ここは俺とお前のお友達でなんとかする!
 お前はあの部屋へ急げッ!!」




その大きな剣を構えた男が叫ぶ。
一瞬途惑うロサダだったが、すぐに部屋から出、全速力で走り出した。





















「・・・・ありがとよ、師匠」







そこは鈍い銀色の部屋。
その部屋の真ん中に、ソレはあった。


使い方は知っていた。
すぐさま軌道させ、その舵を握る。


























うっすらと残る飛行機雲。
それだけが道しるべだった。








どんどん景色が高くなっていく。
耳には聞こえざるけども、風を斬る感覚が全身を駆けめぐっていく。






そして―――ロサダを乗せた「舟」は、空へと飛び立っていった。