「・・・・インヴィディア・・・?」
イオリスが走りながら聞き返す。
その単語に、レルクも化け物でも見たかのような顔をしている。
「・・・ああ。
・・・・インヴィディア、っていうのは・・・」
その時だった。
急に目の前に、十数匹のダーカーが現れた。
通路いっぱいに居る為、進めない。
「クソ!時間が無ェってのに・・・!!!!!!!」
すぐさま各々の武器を構え、怪物を薙ぎ倒す。
そのまま強引に突っ切り、更に奥へと走る。
・・・・・?
何か胸騒ぎを覚えたイオリスが急に立ち止まり、振り向く。
「・・・・・・・!!!!!!!!!!!」
ファイナが、怪物に襲われていた。
必死に剣で斬り付けるファイナだが、怪物の方は痛みに強いのか、血が出ているのに攻撃をやめようとしない。
すぐさまレルクが彼女に加勢し、怪物を退かせる。
ナイフで怪物をメッタ斬りにし、すかさず前に進む。
「・・・さっきは中断されちまったみたいだが・・・
まぁいい、そのインヴィなんたらが敵の手に渡ったら大変な事になるんだな?」
走りながらイオリスがロサダに聞く。
ロサダも走りながら、首を縦に振った。
「・・・急ぐぞ!!!!」
いきなりロサダが叫び、その走るスピードを倍速にする。
インヴィディアが保管されている場所を知っている彼が先頭に立ち、その後ろを他の四人が続いて走っていった。
走る、走る、走る。
現時点でそのインヴィディアについての詳細を知っているのは、昔からアルバ・カテルに居たロサダとレルクのみ。
残りの三人は当然知らないものの、あまりにも必死な形相をして走っている二人を見て事態を察する。
その時だった。
「やあ・・・久しぶり、と言ったところか♪」
エクシムだった。
その手に握った矛を怪しく煌めかせている。
「・・・残りの四人は何処だ」
ロサダが薙刀を構えて問いただす。
しかしその様子に驚く動作も見せずに、
「この先だよ。今頃はインヴィディアを手に入れてるんじゃないか?」と返した。
どうやら見張り役としてここで待機をしていたらしい。
「みんな・・・ここは私に任せて・・・」
ファイナが剣を持って前へ出る。
エクシムは絶対にこのまま戦いを挑んでくる筈。
そうして私たちが戦っている間にも、奴らはどんどんそのインヴィディアという物に近付いている。
ならば、少しでも時間を稼ぐしかない。
ファイナのその行動に皆が一瞬躊躇したが、
そのファイナの眼が全てを物語っていた。
彼女はあの時、決心したじゃないか。
―――もう、迷わない―――
ヴェイルの「・・・みんな、行きますよッ!!!!」の掛け声と共に、
他の五人が武器を構えたままエクシムが立っている廊下を通り抜ける。
しかし、エクシムは攻撃しなかった。
ただ、横を通り抜けていく五人を見ていただけだった。
その予想外の行動にロサダ達が立ち止まったが、
ファイナの「早く行って!!」という叫びを聞いて、途惑いつつも走っていった。
「・・・お嬢ちゃん、大丈夫なのか?」
イオリスが走りながらヴェイルに呼びかける。
しかし、ヴェイルの返答は意外なものだった。
「・・・・大丈夫です。
さっき、私たちの後に続いて走ってきた人が一人いましたから。
尤も、私たちは前へ前へと進んでましたから気付きませんでしたけどね・・・」
「・・・一つ聞かせて。
・・・どうして貴方はロサダ達をあっさりと行かせたの?」
「ああ・・・その事か。
あれはな、俺以外の五人はアイツらが行くかなり前に行ったんだ。
今更アイツらが走ったところで、追いつくなんてどう考えても無理だから」
あっけらかんと言うエクシム。
その言葉に、ファイナの剣を持つ手の力が強くなる。
その瞬間。
「きゃ・・・・・!!!!!!」
するどい金属音が鳴り響き、火花が散る。
そしてファイナの剣に、途方もなく重い鉄球のような重圧がのし掛かる。
「・・・その勇気は凄いんだがな。
力の差っていうのがありすぎるんだよ・・・・!!」
刃と刃が無理矢理重なり合い、ギリギリと音を立てて激しく、そして小刻みに揺れる。
どんどん刃が自分の顔に向かってくる。
必死で相手の矛を押し返そうとするが、全く動かず、むしろ更にこっちへ向かってくる。
その時。
いきなりエクシムがバク転し、その横ギリギリを赤い弾丸が飛んでいく。
そのまま空中で一回転し、着地する。
さぁ誰かと思って顔を上げれば、そこにはあの男がいた。
「・・・・その力の差とやら・・・
見せて貰いたいね、エクシム・・・」
「突破」完