第三十三話「」

「ただいまー!」
アルバ・カテル本部に似つかわぬ気の抜けた挨拶が響く。
声の主は、ファイナ。


「おかえりー」
なんと挨拶が帰ってきた。
返事がしっかり返ってくる事を期待どころか予想すら出来ていなかったので、ファイナ自身が驚く。

声の主は・・・ノックス。




「どうした、皆揃って帰ってきて・・・」

「・・・あのね、イオリスが覚醒できたの!」


その言葉に、ノックスの顔が陰る。
いきなりの展開に、皆が驚く。
しかし彼の顔はすぐにいつもの顔に戻った。


「・・・・あ、疲れてるだろ、いつもの部屋に行ってていいぜ」
ノックスが、いつも通りの親しみやすい言葉で言う。

「・・・・では、失礼させて頂きます」
ファイナより先にヴェイルが先へ進んでいった。
それに続いてロサダ達も進む。





遠くなっていくロサダ達の背中を目で追いつつ、
ノックスは聞こえない程の声で呟いた。





























「・・・・・・おかしい・・・・やけに、早い・・・・・」











それから数十日後。
ロサダ達は、東の村「ヌガ・マムイ」で着実にダーカーを殲滅していた。





















事が起きたのは、

ダーカーの攻撃でファイナが少し傷を負い、
その村の診療所で手当をしてもらっていた時だった。



バン、と扉が急に開く。
皆がビックリして振り向くと、そこには息を切らした一人のトーアが居た。
至って普通の形状の槍を片手に持ち、既に肩で息をしている。


「ど・・・・どうしたの・・・?」
ファイナが椅子から降り、すぐさまその青年の元へと駆け寄る。






「・・・・あ、アルバ・カテルのロサダさん達、ですか・・・・?」
ゼェゼェ言いながら、青年が必死な声で聞く。

「ああ。・・・どうした?」とロサダ。




「・・・・あ、貴方たちに本部へ帰還するように、との連絡を受けてきました・・・・」


「・・・・?」
皆がその顔に?マークを浮かべる。












次の瞬間。
青年の口から、とんでもない言葉が飛び出た。




















































「・・・アルバ・カテル本部が、襲撃を受けました・・・・








沈黙。
一旦の間の後、ロサダがギリギリの冷静さを保ちつつ、聞き返す。


「・・・・・・・・・で、襲撃状況は?」


















「・・・・侵入者は五人。
 彼らは数十匹のダーカーを連れて本部中のトーアを殺害。
 
 ・・・・五人の中に、アルバ・カテルのメンバーの・・・・
 「烈鬼」のエクシム、「黒将」のアミクスの姿が確認されています・・・・」







その言葉を聞いた途端、イオリス、ファイナ、ヴェイル、レルクが無言で部屋を飛び出ていく。
それに続いて、ロサダも彼らの後を追った。








地下にある本部への入り口を開け、
すぐさま本部内に突入する。



「うぐっ・・・・・!!!!!!!!!」
ファイナが、口を押さえて後ずさる。

血の、匂い。
いや、それ以前の問題。


入ってすぐの場所。
そこら中に、死体が転がっていた。
しかも、明らかに喰い殺されている。




「・・・・・行くぞ!早く!」
レルクが先導して奥へと進む。
これ以上被害を拡大させてはならない。

今本部が占領されたら、大陸は確実に滅亡する。
それだけは―――――!!










「・・・・待って下さい。あっちから声が・・・」
ヴェイルが目を瞑って耳を澄ませている。
皆もそれに続くように耳を澄ませる。



確かに。
突き当たりの角の奥の部屋から、
鋭い金属音人の声が聞こえる。
この二つの音の組み合わせといったら・・・・?

















――――誰か、戦っている・・・――――











「急ぐぞ!早く!」
イオリスが耳を澄ませもせずに走り出す。
皆も我に返ったように前を向き、そして武器を構えて走り出した。









「・・・・ハッ!!!!!!!!!!」





イオリスが走りながら、その身体に青紫の光を纏わせる。
そして光が消え、その姿が変わった後も走り続ける。

皆がその姿を初めて目にした為に一瞬驚いたが、
すぐに前を向いてイオリス
に続いた。




そのまま力任せにドアを蹴り倒す。
バン、という大きな音を立てて倒れるドア。


そして目に入った光景は。











鎧を着た男が
その剣を振り回し、大蛇のような怪物が吐く酸性の毒液を跳ね返している。
飛び散った毒液が、周囲の床を溶かしている。


「ザ・・・ザドヴァさん!今助け・・・」




ファイナのその言葉が言い終わりもしなかった。




























一瞬。
彼の剣が、怪物の首を一刀両断していた。
ザドヴァはスピリットではない。だからエレメントは使えない。
しかし、その時の彼の剣は、白い電灯の光を反射して光り輝いていた。

ザドヴァが剣を振り直し、ロサダ達の方を見る。


「・・・・見ての通りだよ、あちこちにトーアの死体だらけだ」




「・・・で、でも、ダーカーはまず倒せるとして・・・
             侵入した五人は何処に行ったんだ?

イオリスがザドヴァに問いかける。
しかしザドヴァは必死に首をかしげるばかり。


まぁ、確かにそうだ。
ダーカーがあちこちに居る代わりに、侵入した五人の形跡がない。
一体彼らは
「何を」目的に、本部の「何処へ」行ったのか?






「・・こうして考えている間にも、ダーカーが暴れてる。
  ・・・俺は他の場所のダーカーを殲滅してくる。
        ・・・・・・・・・・いいか、死ぬなよ、みんな」




そう言っていつもの屈託のない笑顔を見せた後、
ザドヴァはその黒い大剣を抱えて会議室を出て行った。





























「・・・・・ま・・・まずい・・・・ッ!!!!!!!!」





ロサダが何の前触れもなく、急に血相を変えて部屋から出て行く。
いきなりの展開に頭をフル回転させ、他の四人もロサダを見失わない内に後を追った。







「・・・・どうしたんだ、ロサダ!?」
イオリスがロサダと並行して走りながら聞く。

ロサダは一端の間を置いて、言った。
走りながらでは、あったが。












「・・・・俺の予想が外れてなかったら・・・」



























「・・・アイツら・・・

 インヴィディアを狙ってる・・・!!!!」










「襲撃」完