第二十四章「」

「・・・え・・・!?」


D細胞を、使う。
つまりそれは、「人である事を捨てる」という事。
まさか、正気で言っているのか?


「・・・別にロサダの意思を、俺は止めるつもりはないよ。
 ただ、・・・どうしてそう思ったかだけは教えてくれないか・・?」

イオリスが諭すように語りかける。
その言葉に、ロサダが薄ら微笑んで返答をした。



「・・・俺、思ったんだ。
 あの時戦ったエクシムは、D細胞をその身に宿している。
 そして、その代償にあんな人を超越した能力を手に入れたんだ。
 そんな
人間である事を捨てる程の覚悟がある男に、生身の人間が勝負を挑んで勝てる訳が無い、ってね」



皆がその言葉に黙りこくる。
皆エクシムの事を「唯の裏切り者」としてしか認識していなかった。

ただ、ロサダだけは違った。
冷静に自らの力の程を見直し、そして、決して諦めなどではなく『このままでは勝てない』
と判断したのだ。






「・・・・いいぜ」

イオリスが、全てを悟ったような顔で言った。
しかし、その次に出た言葉は、「だけどな」だった。










「俺達は“仲間だ。
 もしお前がD細胞で人間を捨てるのなら、
 俺もD細胞を使うつもりだぜ?」




ロサダが、驚くような表情でイオリスを見つめている。
思いも寄らないような返答だったらしい。


しばらくの間の後、ファイナが口を開いた。








「・・・だったら私も。
 私もロサダやイオリスさんと一緒にダーカーになる」











その、固い決意を表した言葉が部屋中に響く。
その言葉で、もう十分だった。


レルクの、“何かを決断した眼”
がロサダを見つめている。
瞬時にレルクの考えている事を察知するロサダ。
ヴェイルも、ロサダの方を見て、ゆっくりと頷く。









「・・・・どうして。

 どうしてお前達は、そこまで俺に付き合ってくれるんだ・・・?」



ロサダが、なんとも表現しづらい口調で問いかける。
その言葉を聞いた瞬間、イオリスがゆったりとした歩調でロサダに歩み寄る。
そして。


「・・・・・なぁロサダよ」
























バキィッ!!!!!!






何かが砕けたのではと思わせるほどの大きい音。
ロサダの頬が大きく腫れ上がり、そしてそのまま体勢を崩して真後へまるで漫画のように派手に倒れる。

イオリスの顔は穏やかなままだった。
しかし、彼の右手拳だけが震え、赤くなっている。



そしてロサダを見下ろすような状態で、イオリスが口調を変えないまま言う。











「・・・アンタの事を、本当の“仲間
だと思っているからだよ、ロサダ。
 アンタは俺達の事を仲間だと思っていなかったのかい?」

「よく“仲間は運命共同隊”っていうじゃない!ね?」



イオリスとファイナが、屈託の無い笑顔で言う。
その笑顔を返すように、ロサダも笑った。













「・・・・ロサダ」










いきなり、五人以外の声がした。
振り向けば、部屋の片隅にあの男が立っていた。





















「・・・話は全部聞かせて貰ったよ、ロサダ」







「仲間」完