第二十一章「白龍」

辺りには、廃墟と焼けた木と煙だけ。
どこまで歩いてもそんな景色だけが広がっている。
ファイナの目も、さっきまでの弱々しい目ではなくなっていた。



「・・・何か手がかりみたいなモンがあったらいいけどな・・・」
時々、地面や通り過ぎる廃墟の残骸などを
ざっと調べるロサダ。
イオリスやレルクもそこら辺の残っている残骸などを調べている。
ヴェイルとファイナはその間、周囲に怪しい人物やダーカーがいないかを見張っている。






しかし、これといった手がかりは見つからない――――ように思えた。
そう、ただ一人だけ。イオリスは気付いた。






木の折れ方が不自然だった。
ただダーカーの攻撃などで普通の折れ方をしたのなら分かる。

別に折れている箇所が焦げてるのは不自然ではなかった。
おそらく火を使うダーカーだろうから。

別に木に無数の傷があるのも不自然ではなかった。
ここまで破壊されている。傷があっても不思議じゃなかったから。






――――果たしてそれを“折れてる”
というのだろうか。





その木は、仮に「折れて」、切り株のような状態になっていた。
不自然なのは、その切り株の切り口が――――
まるでヤスリか何かで磨いたように、綺麗になくなっていた。

分かりやすい言い方をするならば、
例えば木材を切り、当然その切り口は木の粉や木針などでギザギザとなる。
しかしこの木は、まるで木で出来たテーブルの表面のように、見事なまでにツルツルとなっていた。





すぐさまその問題の木を皆に見せるイオリス。


「・・・何が起こったのか、正直想像できません・・・・」
驚いたような目をして呟くヴェイル。

「まさか村がこんな状態だってのにオブジェ作ってるイカれた芸術家がいるわけじゃあないしな・・・」
皮肉なのか大真面目なのか区別が難しい言葉を口走るイオリス。
そこで「最近の芸術家は、作品の表面を焦がすもんなのかい?」とロサダが返す。



「・・・少なくとも、警戒して損は無いと思うぜ、俺は」
結局レルクが皆の言いたかった事をまとめてしまう。




「・・・ああ。言われんでもわかるよ。みんな、周囲に注意してくれるかい」
警戒しているせいか、ゆっくりと諭すような口調で全員に注意をうながすイオリス。


「・・・分かった」
全員分の「分かった」を代わりに了承するファイナ。




そのまま、前方をロサダ、左をレルク、右をヴェイル、イオリスとファイナが殿(しんがり)を務める形で周囲を警戒しつつ進んでいく。
辺りには緊迫した空気がずっと張り詰めている。
いつ、何処から、何が襲ってくるか分からない。無防備になるよりは警戒した方が、もし死んでも情けなくはない。



「・・・・・・ん?」
ロサダが何かに気付く。
ここは廃墟だらけ。辺りにあるのは屋根どころか壁すら殆どなくなった建物。


なのに、前方約300Mくらい先に、それほど破壊されていない建物がポツンと建っていた。
しかも結構大きい。本来なら真っ先に破壊されていそうなものなのに。







「・・・・・入ってみる?」
ファイナが不安そうな表情でロサダに問いかける。

「・・・・何か手がかりがあるかもな」と進むロサダ。
それに続いて皆も建物を目指して走っていった。




扉を警戒しつつ、ゆっくりと開く。
辺りには、音一つせずに静寂が漂っていた。




「・・・・・いらっしゃい」
急に声が聞こえる。
突き当たりの廊下を右に曲がった先から聞こえてくるようだった。


神経を極限にまで研ぎ澄ませ、その廊下を右に曲がる。
その先には―――扉。






この感覚―――経験した事がある。




あの時だ。
あの「アジト」で、あの怪物と化した男が居た部屋の扉を目の前にした時の。

しかし――今回は、更に嫌な予感がする。
第六感が、この扉を開けてはならないと警告している。



しかし、この先に誰かがいるのは確かだ。
もしかしたら何か手がかりを知っている人間がいるかもしれない。




ロサダが皆に振り向く。
それに応じて皆が頷く。





それを了解し、ロサダは強引に扉を蹴り破った。



そして―――ロサダは一番目の前の男と、その左と右にいる男を見た。














・・・・見覚えがあった。


目の前の男は「久しぶり」というような感じで。
その左と右の男は「・・・・・え?」というような感じで。









「・・・・・・お久しぶりですね」














その男の言葉に、ロサダが不敵な笑みを向ける。




「・・・・ああ。久しぶりだな」




























「再会」完