北陸の鉄道事情調査@ 平成20年 6月 4日 |
![]() 今回の調査先は、研究会が4月に開催した「内陸線市民フォーラム」で講師をお引き受けいただいた 清水孝彰さん(NPO全国鉄道利用者会議理事長)からのご紹介です。第三セクター鉄道であり、上下分離 方式をいち早く導入して軌道事業を行っていること、住民サポーターと「まちづくり」を協働するなど、 秋田内陸縦貫鉄道と共通部分が多いことが理由です。 ![]() ・場 所 福井県「えちぜん鉄道」 富山県「富山ライトレール」 〃 「万葉線」 ・参加者 津谷永光議員(研究会代表) 田口聡議員 石川ひとみ議員 近藤健一郎議員(研究会事務局) 門脇光浩(研究会事務局) ※北林康司議員、淡路定明議員は富山から合流 ![]() 《調査日は平成20年6月1日》 ・会社設立 平成14年年9月 ・資本金 5億3700万円 ・主要株主 福井市等地元5市町 53.7% 他、一般株主 ・路線等 勝山永平寺線 27.8q 三国芦原線 25.2q ・面談者 代表取締役社長 見奈美 徹 氏 取締役計画部長 島 洋 氏 ●えちぜん鉄道以前の出来事 えちぜん鉄道は、京福電鉄が県下で運営していた越前本線・三国芦原線が前身。京福電鉄時代に半年 間で2度の列車死傷事故を起こす。1度目は平成12年12月の列車同士の正面衝突で運転士が死亡。 さらに翌13年6月の正面衝突。この時には前回の事故の教訓が全く生かされていないと、全国から糾 弾の声が上がった。この2度目の事故の翌日から電車の運行がストップしバス代行に。バス代行は2年 5ヶ月間続いた。その結果、沿線はどうなっか…。 バス運行では定時性が確保できなかったため、通勤通学者の遅刻が相次いだ。鉄道利用者の半数以上 の乗客があぶれ、バス代行に見切りを付けた利用者はマイカー通勤、通学者は家族の送迎となる。する と今度は国道416号に大渋滞が発生。それまで鉄道を利用していなかった人(以前からのマイカー利 用者)も他人事ではなくなり、社会問題となった。当時はバス代行が「壮大な負の実験」と揶揄された。 ●第三セクター方式でえちぜん鉄道設立 福井県は第三セクター方式での鉄道運行を決定。平成14年にえちぜん鉄道設立。設立にあたって県 は、 @安全のための設備投資 A鉄道資産の取得(土地、駅舎、車両、レールなど) を行った。一方沿線市町村は、 @資本参加による経営責任 A利用促進に責任 を担い、上下分離の考え方を導入。また特徴的なことに10年間の資金スキームがあった。 県は えちぜん鉄道に対し、資産譲渡(運行に必要な設備投資7.6億円、10年間の設備投資補助39億円 )を行った。沿線の9市町は資本参加(3.75億円で全体の70%)、役員就任、赤字補てん(10 年で27.4億円)の内容となっている。 ![]() 京福電鉄当時の年間利用者数(平成11年当時は300万人)に対し、現在(平成19年実績)はこ れを上回る307万人にのぼる。 ●えちぜん鉄道の戦略 営業・販促の徹底、接客の質の向上、サービス体制の充実がある。自動券売機の廃止、フェイス・ツ ゥ・フェイスの接客、企画商品の販売、ダイヤ結束の高度な工夫、アテンダント(鉄道と乗客のネット ワーカー)乗車など、全国の鉄道の最先端と評価が高い。 ●見奈美社長の言葉 鉄道は社会資本としての役割がある。交通弱者、子どもたち、身体障害者などに優しくなければいけ ない。この機能が低下すれば、子どもたちは学校に行かれない、高齢者は病院に行かれない、気軽に家 を出る手段がなければ引きこもってしまう。そしてもう一つの使命は赤字を減らすこと。リストラで人 件費を削ることは簡単。でもその結果、安全対策が滞ってしまったら大変なこと。京福電鉄時代の反省 を、私たちは忘れてはいけない。鉄道経営は損益分岐点が非常に高い。だから売上げを増やして赤字を 減らす道を選んだ。 何もしないで運営を続ければ年間3%程度の乗車数減少は必ず起こる。だから絶えず乗客を増やす作 業を行っている。「こんなイベントをやりました」みたいなことを言っているうちは、全くダメ。えち ぜん鉄道は毎日、必ず何処かの時間帯でイベントを組んでいる。イベントが平常業務だという認識だ。 それで何人乗ったかということは問題視しない。単品ごとの原価計算をやったら、間に合わないに決ま っている。 乗客を増やすためには投資以外にない。売上げを増やす、お客様を増やすために投資をする。何も金 感情だけの話しではない。サービスも思いやりも投資だ。県と沿線市町のスキームは10年をスパンと している。だからゆっくりと、大事に鉄道を育てたいと思っている。あとは積極的に地域に働きかけ る。営業という言葉とは少しニュアンスが違う。沿線に住んでいる市町職員、県庁職員には、えちぜん 鉄道で売り込みに伺っている。そしてきっちりと乗ってくださいという。協力いただく民間企業の皆さ んにも同じようにお話しをする。この鉄道を残したいと思い、県も市もその判断を下したのだから、そ の協力はしてもらう。この鉄道の存在は「地域住民の残したいという気持ち」から、すべての行動は始 まった。知事や県議をその気にさせたのは、地域住民の声、そのものだった。 |