CAFE+INN That Sounds Good! 

暖炉の話

「いや暖けすな。こご、暖房は何だすか。」
「床暖です。」
「あ−やっぱしな。どご見でもストーブみでんた物ねえがら、んでねがな?って思ったったのよ。いいもんだしな。」
「けっこう暖まるんでびっくりしてるんですよ。」
「足の方がら暖まるっていうのが気持ぢいいもんな。これなば、スリッパ履がねほいいわ。」
「でも、床暖もいいけど、本当は暖炉が欲しかったんだよね。」
「暖炉がー。」
「そう、このうしろのカベに埋め込み型の暖炉をつける予定だったのよ。」
「ダメになったわげ?。」
「予算オーバーで一番最初に削られちゃつた。」
「おいや残念だったな。暖炉あったらもっと暖けがったべな。」
「いや、実は暖炉っていうのは部屋中を暖めるほどの威力はないんですよ。扉がなくて直に火が見えるタイプの暖炉なんかは、部屋中の空気をみんなもってっちゃっ て、かえって室温が下がることもあるんだって。」
「あ−、んだがもしれねな。あれは暖房設備でねくて採暖設備だがらな。」
「そうそう、詳しいですね。採暖ってのは暖をとるってことでしょ?」
「んだんだ、オレだも家を建でだどぎに大工さんがら聞いだんだども、暖房っていうのは部屋どが家中どがを暖けぐするごどで、採暖の場合は焚ぎ火さあだるよんたもんだそうだ。」
「なるほど、まさにその焚火を家の中に作りたかったわけよ。床暖は確かに暖かいけど、寒い寒いって入ってきたとき、手をかざす場所がないじゃない。」
「それなばンだな。暖炉みでんたのあればだまってらってそさ行ぐもんな。」
「そうだよね。みんながそうだから、暖炉の前って自然に人が集まる場所になるんだよね。」
「ん−、前だばオレだ方の事務所も真ん中さドンとストーブ置いでらったがら、やっぱし寒ぐなれば時々そさ集まってきたったもんな。」
「今はないのストーブ?」
「今ほれ、ビルの2階さ入ったがら全部セントラルヒーティングだもの。」
「あ−、それじや時々集まってムダ話しする場所なくなったから、仕事がはかどるでしょ。(笑)」
「(笑)んだどもよ、やっぱしそういうムダ話しも必要でねが?。」
「いろんな話しの中からお互いのことを分かりあって、もっと人間的なつきあいができるようになるからね。」
「みんなだまって机さ向がってれば、しゃべられねごどだもの。」
「ストーブの前だと、ムダ話しみたいなふりして、けっこうまじめなことも気楽に相談できたりして。」
「焚火たいでれば子どもばしでね、大人も集まって来たもんだしな。あれも近ぐの人だぢの社交場だったんだべなぁ。」
「火の前では人間は本当に人間らしくなれる…ってね。そういう雰囲気を自然に演出できる力があるんでしょう。」
「そういうどご、ねぐなってきたがら、今なばあんまし余計なごどしゃべねぐなったんでねが。」
「うん、学校なんかも全館暖房やめて、昔みたいに薪ストーブとか、図書室に暖炉とか作ったら、非行や登校拒否なんかなくなるんじゃない?」
「んだ、火の世話させれば火の大事さも分がるしな。」
「誰か家に暖炉寄付してくんないかなー?」
「(笑)」

− 雪の降りしきる午後、お客さんとの会話から −

◇   ◇   ◇

 まったくムダを無くそうと躍起になることほど、ムダなことはありません。ムダと余裕と逃げ道は、健全な社会生活の必需品!人はそんな安心できる場所を求めているのでしょう。秋田の魅力はそんなところから作っていけそうな気がします。

佐々木達哉
1960年生まれ。
昨年8月から田沢湖畔に住み着く
喫茶&ペンション・オーナー

1994年1月28日 週刊アキタ「秋田論壇」から 

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