佐藤家蔵|工事の流れ

築130年の蔵の移築改修工事。放置状態となっていた文庫蔵を、地域の交流施設へと甦らせる。

蔵の前には管理人の住宅があった。蔵本体を覆う既存の住宅と鞘堂は、移築に伴い解体する。

着工前の蔵内部2階の様子。柱や梁は全て漆塗り仕上げ。 着工前の蔵内部1階の様子。15cm×18cmの柱が30cm間隔で配置されている。 窓には外部からの不法侵入を防止する鉄格子が設置されている。室内側には防火用の漆喰戸と採光用の障子戸がそれぞれ設けられている。

調査時の妻面の様子。大扉左側の漆喰壁が大きく脱落している。 大扉の様子。黒漆喰部分は白華もムラもない良好な保存状態であった。

既存住宅部分を撤去し、蔵本体の解体に入る直前の様子。蔵が鞘堂に覆われている様子がわかる。 木軸組から土壁を取り除いている様子。土は再利用するため慎重に集積し保管する。

土の中に白い欠片がいくつも見られる。これは漆喰壁の一部であり、この蔵の荒壁土は再利用したものであることがわかる。 縦縄と横縄が伏せ込まれている様子。25〜30cmほどの厚さの土壁が塗り込められていた。

棟木の端部に長年の漏水による腐食が見られた。部材全体としての状態は良好であるため、内部を清掃・防腐処理をして漆喰を充填し再利用する。 登り梁の継手の結合が強固かつ複雑で、屋根上での分解が不可能であったため、組まれた状態のままクレーンで吊り上げた。

登り梁の継ぎ手。追掛大栓継ぎと呼ばれる継ぎ手を応用した型式になっている。

大引は直径24cmの栗の未製材が用いられていた。床下には泥炭を乾燥させたものが充填されており、結果としてこれが湿気を保持したため部材の腐食が激しく、再利用ができなかった。

基礎石は地元大仙市雄物川流域の一部で採石される蛭川石と見られる。

移設先に建物全体を覆う仮設の足場と屋根を設け、その中で蔵の組み立て作業を行っていく。この屋根は軽量鉄骨と枠組足場で構成される。全体が5分割されており、各区画ごとに脱着可能となっている。今回のために特別に製作された。

沓摺石の据え付けには、かにクレーンと呼ばれる重機を用いる。通常の小型クレーンでは困難な、狭小スペースでの作業を得意とする。 屋根廻りの組み立ての様子。棟木は11mの杉一本通しモノで、重量は800kgを超える。直径は元口で60cm、末口で45cmもあった。

幅12cm×高さ13.5cmの登り梁は30cm間隔で配置されている。 梁・桁・登り梁の仕口の様子。梁は幅40cm×高さ60cmもあり、さらにこの梁の受け桁ですら幅20cm×高さ45cmもある。

組立完了時の内部の様子。

木小舞に付縄を取り付けた様子。

木下地への荒壁付けの様子。縄と土を交互に伏せ込み、漆喰壁の下地を構成していく。 荒土を直径15cm程度の土団子にして木小舞にたたきつけるように取り付けていく。1日に3〜4段積み上げる。

土に練り込むスサを切っているところ。スサは稲わらを5〜6cmに切ったもので、土どうしを結合する繋ぎの役割をする。

窓廻りの木下地。役物の大まかな形を組んだ上に土をつける。

防火の目的で18cm程度の厚さで屋根面に土を置く。乾燥させヒビ割れさせた後、たたき締めを行い前面を均一に乾燥させる。 乾燥し安定した土の上に、仕上げ用の粘土漆喰を施工した状況。

扉の欠損部分の下地を修復した様子。茶色の荒土の上に漆喰で仕上げを行う。 扉の荒土には、植物の表面繊維が繋ぎとして練り込まれている。 扉の欠損部分の断面。漆喰で骨組みを作り、荒土を重ね、仕上げの漆喰を施していることがわかる。

置き土の上に屋根が掛かった状態。粘土漆喰面には養生シートをかぶせ保護している。 蔵前ホールの上部軸組架構の状態。

2.左官工事