「そーらん節」の稽古

言わずと知れたそーらん節は北海道の民謡。ニシン漁の作業の工程で歌われた労働歌です。漁は2,3月の時期でした。寒風をついて仕事に精出す漁師達の姿を踊りで表現した振り付けは多くの人々を魅了してきました。民舞の稽古を始めるに当ってまずはそーらん節をとりあげてみました。
初めての方は是非挑戦してみてください。今まで踊ったことのある方もチェック用に活用していただければ幸いです。
(ご意見、感想などいただけると嬉しいです)

そーらん節1番

踊りの手順
解説

前奏の間手拍子を続ける。

歌いだしヤーレンソーランソーランのヤで重心を落としながら左に移し櫓を漕ぐ準備を素早く。
太鼓のドーンコドンコドンカカのリズムに合わせて櫓を押す、ひくを4往復繰り返す。(4往復目のひきの最後丸をしたンの部分ですね・・・ここでは手を返さずに次へつなげます)
【ポイント】
押しもひきも動き出しは腰をぐっと入れてから重心が移動をはじめる。それに合わせて押しの場合は手が伸びていき、ひきの場合は手が身体に寄ってくること。それぞれ押しひきの限界まで行った時点で手首を返して櫓の向きを変える。(そのタイミングの目安は太鼓のリズムのドーンコドンドンカの太字にしたところ。

4往復の櫓漕ぎが終わったら、ハイハイの掛け声部分になります。最初のハイでぐっと素早く櫓をひきなおします。二つ目のハイで右手を上げ、左手は左横に持っていき腰を落として構えます。
ドーンコで左足を軸にして右足を直角に横に上げ、あげていた右手で右太腿をバシンと打ち流します。(手は一つ前と入れ替わっていますね)次のドンコで上げていた足を下ろします。
次のドンカカはそれと全く反対の動きをします。但し最後は左足をつくと同時に両足で踏み切ってジャンプします。(両手は外回しです)
再びドーンコドンコという太鼓のリズムになりますので両足を同時に着地し、腰をしっかりと落とします。その時手は肘を張って身体の前で重ね合わせます。(右手が上のほうがいいでしょう・・・ちょうど腕で舟の形を作る感じです)顔は伏せます。(但し猫背にならないように気をつけましょう)
次のドンで顔を上げて正面をしっかりと見ます。
カカで重心を左足に移して次の準備になります。
【ポイント】
男度胸はの部分1拍ずつでぐいぐい踊りますから腰の上げ下ろし、手のチェンジをテキパキとダイナミックに。ジャンプは両足踏切で足がダラリとならないように引付て飛びます。

ドンコドンコで右足を斜め前に出して右ひじから足と同じ方向に突っ込みます。大波に揺られて舟の舳先が波底に突っ込む感じです。(上半身と腕の関係は上の五尺の身体〜の時と同じに保っています)次にドンで重心を左足に移して上空を見上げます。波底から今度は舳先が天空に向かう感じです。次のカカで右足を戻して重心を乗せます。これは次への準備のためのチェンジです。そして改めて左足をドンコドンコで左前に出、ドンで右足に重心を戻す、という先程と反対の振りを踊ります。
そして次のカカで右足重心のまま両手を開き、ドーンコ(掛け声はチョイ)で左足を戻しながら両手打ち1回。
【ポイント】
腕の形を変えずに重心移動で大波に舟が揺られている様をダイナミックに 表現します。
ヤサで左足を前に出して左手を臍のあたり、これも身体の前に伏せて差し出します。(これは船べりの感じ)エでさらに右足をぐっと前に大きく踏み出し先程の伏せた左手の上から右手を前方下方に向けて差し出します。
海の中に手を差し込む感じです。手は五本の指を開きます。(そーらん節は指をまとめて使わずに働く男の手の感じでがっしりと開いていた方がいいでしょう)
次にエンで左足に重心を戻しながら伏せた左手を握り、その左手を軸にして右手を一回転させます。この時先程海に差し込んだ右手も網を握り締める感じでぐっと握りこぶしを作り腕にその網を巻きつける感じで処理します。ヤーで右足を斜め後方に引き右手を身体の横上方にかざします。左手も右手もしっかりと腕を伸ばしてバランスをとります。この時重心は右足ですが前足もしっかりとふんばりましょう。
同じ動きをーサーノドッコイまで繰り返します。
ショで上半身はそのままの形で左足を引いてそろえます。(足の間隔は肩幅位がいいでしょう)
【ポイント】
前後の重心移動をダイナミックに踊ること。
左手に巻きつけた右手は引き絞るような感じで横上方に持っていくと力感が出ます。その振りの最後で両手首にちょっと力を入れてさらにクッと絞ると引き締まります。
いよいよ一番の最後です。
これは最初に出てきた振りです。(ハイ)ハイ、男度胸は〜の部分と全く同じです。
その動きをハアドッコイショドッコイショの掛け声で踊ります。

そーらん節楽譜

楽譜と照らし合わせながらお稽古してみてください。良かったら歌を歌えるように頑張って、歌いながら踊れると良いですね。
(私の印刷機が故障のため手書きになりました。見にくいと思いますががまんしてください)
注・楽譜の見方
  ♪太鼓の音符の羽根が上向きは右手で叩きます。下向きは左手です。(四分音符も八分音符も十六分音符も全部そうです。
    おたまじゃくしの●の代わりに×がついているのは縁叩きです。同じく右手、左手は羽根の方向で叩き分けます。
    両方(上下)についているのは両手打ちです。


そーらん節4番の歌詞(スペースが足りなくて楽譜に書けませんでした。歌詞付けの法則は各番と同じです)
   ヤーレンソーランソーラン ヤレンソーランソーラン ハイハイ
   親父大漁だ 昔と違う
   獲れた魚は オラが物 チョイ
   ヤサエ エンヤーサーノ ドッコイショ
   ハア ドッコイショ ドッコイショ

そーらん節の2番です。

最初と最後は一番と同じで、サンドイッチされた部分だけが綱引きの動作に変わります。
2番は一番シンプルな振りです。頑張って挑戦してみてください。
ハイハイで手拍子二回打ちます。
その後綱引きを4回繰り返します。そして4回目が終ったらチョイで一回手拍子。
これだけが一番と違う部分です。
それではもう少し詳しく解説いたしましょう。
ハイハイの手拍子とチョイの手拍子はしっかりと膝を伸ばしてバシッと打ちましょう。
綱引きですが自分の左横に向かって引きます。
腰をしっかりとすえて(労働の腰です)ドーンコで右手でしっかりと綱を掴みます。
次のドンコで右手を少しずらしながら左手を右手の先に持っていき綱を掴みます。
3拍目のドンで腰に力を入れて引きます。この時すぐに腕は曲げない方がいいでしょう。
そしてカカまでかけて体全体を使い最終的には腕も使って右横限界まで引き切ります。
また最初の右手で掴む動作に続くわけです。
これを4回続けます。
そうするとチョイが来て、後は一番と同じです。
【ポイント】
腰をしっかりとすえて床と平行になるように左足から右足に重心移動を繰り返します。
つかむ時は出来るだけ綱の先のほうを掴む気持ちで腕を伸ばしましょう。
引ききった時、右横にいる人に綱を手渡すような感じを持つと良いかもしれません。
綱の高さは腰のあたりを目安にすると良いでしょう。
(群で踊る時、高さの目安を統一して一本の綱に見えるようにします)
この振りは踊る時掛け声をかけます。
ドーンコドンコの時「それ引け」と一人がかけます。
ドンカカでその他の全員で「ヨイショーッ」と返しながら踊ると気持ちが高揚して作業が楽しくなります。

そーらん節の3番です。

最初の船こぎは1番、2番と同じです。
ハイハイで身体の前の床に積み上げてある大きな網を2回手繰り寄せます。(これから海に投げ入れるのです)
今までのリズムの取り方の法則通りドーンコで右前の海の中にその網を投げ入れます。続いてまた掴み(ドンコ)左前の海へ(ドン)掴んで(カカ)右前(ドーンコ)掴んで(ドンコ)左前(ドン)へ投げ入れます。(つまり2往復右左と海に投げ入れる訳です。網はデッカイ一つの網を想像してください)
最後にカカで右足に重心を移し(ちょっと後ろに引いても良いでしょう)手拍子を一つ打ちます。
次の帆を巻き上げる態勢に移る準備です。
【ポイント】
腰をしっかりと据えて作業しましょう。かき寄せ、投げ入れる手は網を掴む手ですから華奢にならないように、ちょっとごつめに使うと逞しさがでます。
最後の手拍子の時は目線はこれから巻き上げる帆柱の天辺を見据えます。
それでは帆を巻き上げます。
ドーンコで左足を一歩前に踏み出しながら右手で帆柱の天辺に繋がっている綱を掴みます。
ドンコで左手をさらに右手の前に持っていき綱を掴みます。(これで両手で掴んだことになります)その時右ひざをぐっと上げ左足のカカトも上げてできるだけ綱の遠くを握るようにします。
ドンで右足を後ろに着きながら綱を引きます。
カカで重心を出来るだけ低くしながら綱を引き切ります。
これを二回繰り返します。
最後は左足をもどしながらチョイで手拍子1回。これは今まで出てきましたね。
【ポイント】
この動きは2番の綱引きと組み立ては同じです。
横に引くか斜め前から引くかの違いだけです。
でも下半身の動きが複雑でダイナミックになりますからその分踊りこなすのは大変です。
フラフラしないように、しっかりとバランスが取れるように頑張ってみてください。
次に1拍目ヤサで腰を入れて右足を踏み込みます。この時右手もやや右前方向にぐっと差し込み、差し込んだ右手の延長線上を見ます。
そして2拍目、3拍目と左足に重心を移してトントンと2度左足で拍子をとります。
この時の目線は右上の上空です。
さらに右足に重心を乗せ変えて4度右足で拍子をとります。目線は左上空に替わります。
そうしましたらドッコイショのドッで左足を着き正面をしっかりと見据えます。
(ここまでの手は身体の両サイド、肩の高さで構え重心が移っても上体が傾いでも幹と腕の関係は固定したままです。ただしあまり真横に伸ばすと間が抜けた感じになりますから肩の高さのままちょっと前目に持ってきます。目線に手が入るくらいが良いでしょう)
コイで両手を重ね合わせて顔を伏せます。
ショで顔を起こし正面を堂々と見ます。
【ポイント】
感じとしてはちょっと歌舞伎の六法に似ていますね。両手は張り手といって5本の指をしっかりと広げ、手首からクッと立てます。親指は腕の延長線上に延びていく感じです。足拍子は1,2,4の刻みです。つまり@ヤサAエBエンCヤD〜Eサ〜F〜ノと一拍ずつです。この刻みは4番の同じ所で出てきますので(振りは違いますが)しっかりとマスターしましょう。
最後のハァドッコイショドッコイショは1番2番と同じ振りです。

最後4番です。

サアいよいよ最後の番4番です。これが一番難しいと思いますが頑張って挑戦してください。
今までこのフレーズは1,2,3番とも櫓漕ぎをしてきましたが4番のこのフレーズは網起こしです。
まずヤアーのアーから網起こしの始まりです。腰をしっかりと落として右手を伸ばして目の前の魚がいっぱい入っている網をつかみます。(太鼓はドーンコ)次にそのつかんだ網を右の太腿越に身体の後ろに送り込みます。この時重心は左足に移動しておきます。(ドンコ)そしたらまた重心を真中に戻して腰割りで左手で網をつかみます。さっきの反対の動きですね。(ドン)当然次の動きは左太腿越に網を後ろに送り込むという動作になります。(カカ)
この動作を4往復続けます。
【ポイント】
これは腰割りとその重心の平行移動を活用した動きがポイントです。油断すると冷たい海に落っこちてしまいますから腰を据えて重い網を引き揚げます。手は網を掴むためには最初指を広げておき、網目に指を差し込むようにしてギュッと握ります。それを後ろにヨイショと送り込むわけです。
動作を繰り返す中でだんだんと魚が見えてきて網が重くなる感覚をイメージして踊ると良いでしょう。
腰割りの基本も抜き出して稽古をすると良いかもしれません。そのやり方は次のハイハイの下半身(肩幅より少し広げた足で立った状態)から網起こしの最初の箱型になる腰まで落とす。それだけを何度も繰り返して訓練します。ぜひやってみてください。

ハイハイはこれまで出てきました。これはしっかりと腰を立てて堂々と手拍子2回。
次にドーンコ(休符とお)で左足を前に出して重心を乗せ右手を下から前方に投げ出します。左手はバランスを取って後ろに持っていきます。イメージとしては綱を遠くに投げる感じで。ドンコで(やじ)その綱を腕に巻きつけます。身体の前に持ってきた左手に右手をグルッと一回転させるのです。この時両手は握りこぶしです。次のドン(大)で巻きつけた綱をぎりぎりと引ききります。重心は右足に完全に移動します。カカ(漁だ)でもう一度投げるための準備、右手を後ろに大きく振りかぶります。
これまでの動きを2回目繰り返します。ただし2回目の最後カカでは次の作業の動作に移っていきます。
それはタモと言って取っ手の着いた網で獲れたニシンをすくい上げる作業です。
そのタモを差し込むための予備動作になります。絵では判りづらいと思いますが両手でしっかりと取っ手の棒を握り、左手の先に円い網があって(トンボとりの網のごつい奴を想像してみてください)それを先程収穫した魚の中にぐっと差し込むのです。
ここではその準備動作まで。
【ポイント】
今度は前後での重心移動です。大きく足を前後にひらきましょう。絵では左足の描き方が内股のように描かれていますが実際は内股ではありませんので。
先程の説明の通りタモを差し込みました。(ドーンコ)重心は左足です。次はタモを持ち替えた動きになります。つまり今度は右手の先にタモ網が変わりました。これのやり方は足の位置を変えずに腰割りになり左腰の所で両手の握りこぶしを反転させます。(ドンコ)そして魚が入っているタモ網を後ろに放り投げます。重心は右足。少し高めに放り投げましょう。(ドン)もう一度繰り返しますので次の太鼓のカカで予備動作にはいります。つまり又タモ網を持ち替えて(左手の先に網の位置が変わります)大きく振りかぶります。
2回目のすくいから投げまでをやったら(おらが)歌詞の「もの」で右足に重心を乗せたまま両手を大きく開きます。チョイで左足をついて手拍子となります。
【ポイント】
右手と左手が一本の棒を掴んでいるように。ぐにゃぐにゃ曲がったりしないように気をつけましょう。タモ網に入った魚は結構重いのでその重量感を腰で感じれるようになるまで差し込んで、持ち替えて、投げて、ふりかぶってを一拍ずつのリズム感で動けるように何度も稽古をします。
サア本当の最後になりました。
これも絵では中々判りづらいと思いますが頑張りましょう。
この動きの全体像は先程タモですくい上げた魚を背負い籠で作業小屋に運ぶ動きになります。ですから両手は背負い籠の背負い紐を握っている形なのです。
リズムの取り方は3番のこのフレーズと同じです。
それでは行きましょう。
ヤサで右足を前に出して魚の一杯入った籠を担ぎます。(右足は一拍です)その時右手も背負い籠の背負い紐にぐっと差し込みます。左手は最初から背負い紐を掴んでおきます。エで左足に重心を移します。担ぎきった状態です。次エンでもう一つ左足で拍子をとります。(これで左足は二拍ですね)右足はここでは高く上げます。次、また右足に重心が移ります。ヤで右足を前に踏み出し、その右足を軸足にして2,3,4と拍子をとりながら向きを右真横まで変えます。(〜サアノ、右足は四拍です)ドッコイショのドッで左足を着きコイで踏ん張ります。ショで重心を左足に乗せきって背負い籠から魚を前に投げ出します。両手もしっかりと伸ばしきりましょう。
最後です。ハアで左足重心のまま右手を額に持っていきます。でも身体の向きは変わり始めてはいます。ドッコイで右足をつきながら額の汗をぬぐいます。この時にはすでに正面を向いています。次ショーで反対の左手を額に持っていきます。重心は右に移しておきます。ドッコイショで左足をつきながら左手で汗をぬぐいます。
これで完成です。
もし後奏ががあるようでしたら一番最初と同じように櫓漕ぎをします。
【ポイント】
この動きは身体が左横から右横まで180度完璧に切り替わります。籠一杯の重い魚を担いでの向きの転換なのでフラフラや軽々ならないように重心を落し目にしながら重めにステップを刻みましょう。最後魚をあける時はドサリと思いっきりよく腰で踏ん張ります。

ご苦労様でした。如何でしたか?判りづらいところも多々あったかと思います。もしご質問等ございましたら遠慮なくメールでも電話でもください。
それでは次の曲をお楽しみに!
ありがとうございました。

菊池 記