安原さん稽古記録 2

2008年2月

2006年の初夏から2ヶ月間民舞の訓練に明け暮れた安原さん。
はるばるカナダのモントリオールからその為だけに来日したのだが、あの日から2年が経った今年の2月再び秋田での民舞訓練に汗を流した。
この2年間、彼女は目覚しい活動をカナダで展開した。
民舞という新しい武器を手にした彼女は、嵐太鼓で培った太鼓も生かしながら独自のスタイルでカナダの人々の共感を勝ち取っていったのである。
そして最大の実績は、モントリオールで催される夏のフェスティバル、モントリオール祭りJAPONでの盆踊りを成功させたことだ。
そのためにまったく日本の踊りを踊ったことがない人々を何ヶ月もかけて鍛え上げ見事な盆踊りを創り上げたのである。
評判も上々だったそうだ。
その活動をさらに発展させるべく、また自らのレベルアップのために目標を定めて訓練に臨んだのである。
これはその記録。

まずは最初に彼女のパフォーマンスを充実させるために神楽の演目に挑戦した。
挑戦したのは青森県の田子神楽から盆舞の中の「切り番楽」
かつてモントリオールにワークショップに訪れた時に私がミッシェルの太鼓で踊ったのを覚えていてくれて、あの踊りをということになった。
歯切れの良いダイナミックな踊りである。
そして扇子を鮮やかに使いこなさなければならない。
この扇子との格闘がやはり第一関門となった。
それから神楽独特の身体使い。
どうしてもネックになるある部分の消化にかなり手こずったが、目標は4月のパフォーマンスにこの踊りをどうしても取り入れたいという熱意で頑張りぬいた。
最初から安原さん持ち味の粘り強さが勝利を得たのである。

そして秋田の手踊りの代表格、拳囃子へ。
落ち着いた大人の女性の品格のある踊りでやはり扇子の踊り。
動きが田子神楽ほど複雑では無いのですがかえって纏め上げるのが大変な踊りとも言える。
細かなあらが目につきやすいのである。
そうした部分部分をコントロールして一点一画を疎かにしない楷書の踊り方、それがこの踊りには求められる。
そうした意味では経験を積むごとに、年齢を重ねるごとに進化していく踊りだとも言える。
今後の奮闘が楽しみである。

さて、もちろん前回の踊りの復習も大切な訓練のねらいの一つ。
津軽じょんから節、越中おわら節、西馬音内盆踊り、さんさ踊り、それぞれに型が崩れていないかチェック。
本人の努力の賜物で思ったほどは崩れてはおらず、多少の修正をしたくらいでした。
そして越中おわら節については今回さらに上を目指す。
男のかかし踊り、女の新踊りだ。
訓練をはじめてみると意外と男踊りが良いのです。
あまり品をつけずにさばさばと踊るところが性に合っていたのかも知れません。
いずれにしてもどちらの踊り方も間もなく飲み込んでいったのです。
今回は1ヶ月弱という限られた期間での訓練でしたが、運良く宿泊場所をお隣の松橋さん宅にさせてもらうことが出来たので、一昨年のように片道30分以上かけて自転車で通ってくるという時間のロスは免れることが出来ました。
そこで朝は2時間、昼から3時間の稽古が出来たのです。
私に別のスケジュールが入って無い限りその稽古時間を確保しました。
彼女の意欲は凄まじいですからこのチャンスを絶対生かしきる・・・という決意の本、本当に凄い集中力で次々と踊りをマスターしていきました。

おわら女踊り
おわら男踊り

その後「はねこ踊り」「秋田音頭」「阿波踊りの基本(女・男)「こきりこ節」へ。
まだまだ彼女の挑戦は続きました。
はねこ踊は全身をフルに使いきってジャンプはあるは、腰は落とさなければならないは、その上テンポは速いはで凄い重労働の踊り。
そしてこれでもかと言う位同じフレーズが何度も繰り返されるのだ。
ここで発揮されたのも彼女の決して根を上げない粘り強さ。
ホノルルマラソンを何度も経験した彼女の体力だ。
そしてこの頃には稽古期間は予定の3分の2は優に過ぎていたと思う。
残された期間はあとわずか・・・。
しかしこの頃には一曲をマスターするスピードがグンと増していました。
はねこ踊りからこきりこ節、秋田音頭へ。
平行して阿波踊りの基本へとスピードアップ。
秋田音頭も予想外に短時間で順調に踊りこなし、そんな中で意外と苦戦したのは阿波踊りの手のニュアンスだったかもしれない。
指先を軽快なリズムに乗せて綺麗に伸ばしたり緩めたりの素早い繰り返し。
テンポが速いために頭脳的に分析しながらと思っても追いつかないのである。
リズミックな指先の運動。
これが速い伴奏音楽に無条件に反応するには後しばらくかかるかもしれない。
カナダでの飽く事の無い訓練の継続を期待。
それでもそこは彼女のこと、女の踊りも男の踊りも大分阿波踊りに近づいては来た、というところで訓練は終わりを迎えた。
またこきりこ節も意外と苦戦した。(これは稽古の時間が少なかったということもある)
淡々と流れるように踊る。
いわばあまり変化のない踊り(のように見える)。
私の大好きな五箇山の踊り なので訓練の曲目に取り入れたのですが又の機会があれば再度じっくりと稽古をしたい・・・という余地をのこして訓練の終わりとしたのです。
最終日は彼女のお友達が彼女が日本の芸能に挑む姿をカメラに納めるためにはるばる横浜から(?)やってきた。
全部の曲目を当たりきって稽古の総仕上げとする。

阿波女
阿波男
はねこ踊り
こきりこ節
そして今回もののはなでパフォーマンスも

夕食を息子夫婦、お隣の松橋さん南里さんらも呼び、安原さんのお友達も加えて「きりたんぽ」でお別れパーティー。
そのまま食事だけで終わるわけは無く「切り番楽」を披露。
みんなの驚きの声をもらって訓練期間は無事に終了。
一路実家の横浜、そしてカナダへと向かって我が家を発っていったのです。

彼女の今後の活動を期待して!