たざわこ芸術村のハイテクを駆使した舞踊研究

世界初のデジタル舞踊符のCD−ROMが完成

25日から幕張メッセで成果を発表(11月21日・土)

  田沢湖町のたざわこ芸術村(小島克昭代表)のハイテク部門である「デジタルアートファクトリー(DAF)」が通産省のマルチメディアコンテンツ制作支援事業の選定を受けて開発に取り組んできた「民族芸能の3次元デジタル舞踊符に関するCD−ROM制作」が完成、その成果が25日から27日まで千葉県幕張メッセ展示ホールで発表される。秋田大学と県工業技術センターの協力を得て研究を進めてきたもので、様々な踊りの動きをデーターとして蓄積し、振り付けの研究や踊り手の育成に役立つことになる。同時にアニメや映画、舞踊の創作など広範な用途を持つソフトだけに、世界的にも注目される高度な技術の確立として話題になりそうだ。

  通産省のマルチメディアコンテンツ制作支援事業は優れたアイディアや技能を持ちながら、資金不足でコンテンツ制作に恵まれないベンチャー企業や中小企業の制作技術、制作素材の開発を支援し、わが国のマルチメディアコンテンツ産業の活性化を図ろうと27億円の予算を組んで全国公募したもの。

  マルチメディアはコンピューターを使ったデジタル音声情報、映像情報、活字情報の組み合わせで、インターネットもその身近なものだが、コンテンツはその中の一つの素材の制作を言う。公募した結果、全国から1198件もの応募があった。DAFでは「民族芸能の3次元デジタル舞踊符の開発と作成」という研究課題で昨年6月に申請、厳しい競争を勝ち抜いて35件の支援の枠に入った。採択されたのは黒澤プロダクションや「音楽の友社」など著名な企業がほとんどだった。

  たざわこ芸術村は、民族芸能の現代化を目指す劇団「わらび座」を母体とする文化施設。DAFは劇団のコンピューター室として、チケットの管理や経理に使うソフト作りを担当していたが、マルチメディア産業の急速な進歩に伴い、その可能性を探ろうと2年前に「デジタルアートファクトリー」と名前を変え、インターネットのプロバイダーである「きたうら花ねっと」事務局を務める一方、マルチメディアの研究とソフト開発に当たっている。

  長瀬一男さん(45)をチーフディレクターに海賀孝明さん(27)がチーフエンジニアとして開発に取り組んできた。今回、通産省の支援を受けて開発したソフトは舞踊コンポーザーと舞踊コンバーターの2種類。特殊な装置で磁気を張りめぐらせた約30平方メートルのスタジオで、両手の甲や両腕、両足、頭、腰など16カ所にセンサーを取り付けた踊り子に舞踊を演じてもらい、その動作を音楽の音符のように「舞踊符」として記号化し、データーをコンピューターに蓄積。音楽がドレミの音符の組み合わせで作曲されるように、舞踊コンポーザーは、そのデーターを分析して舞踊符を作り、新しい踊りの創作にできるようにするもの。恐竜の登場で人気を呼んだアメリカ映画「ジュラシックパーク」はコンピューターで恐竜の動きを分析し、それをグラフィック化したものだが、DAFでの取り組みは人間のもっとも複雑な踊りの動きをコンピューターで分析し、そのデーターを蓄積した。

  これに使う装置として映画「タイタニック」にも使われたモーションキャプチャーという機械をアメリカから輸入。モーションは動きを、キャプチャーは収録すると直訳されるようにセンサーを付けた人の踊りの動きを収録し、舞踊符を立体画像として取り込み、コンピューターの画面上で動かす。コンピューター画面では、センサーによって得られたデーターが「点」のようにしか見えないが、その点に衣装を着せ、顔を描くと実際の人間の動きが再現される。

  去る10日に山形県鶴岡市で開かれた「デジタルコンテンツグランプリ東北’98」の審査発表会ではDAFから素材の提供を受けて仙台市の会社員原田宗明さんが制作したコンピューター・グラフィックス・アニメーション「鬼剣舞(おにけんばい)」がグランプリに輝いた。本物の人間が踊っているような映像がスクリーンに再現され、「立体画像化ソフト」として注目を浴びた。海賀さんによると「ビデオ映像は再利用できないが、このソフトで蓄積したデーターなら、キャラクターの顔や衣装を変えることによって、例えば森の木を人間のように踊らせたいとなればそれも可能だ」と話す。ぎごちなかったアニメーション映画もこのソフトによってリアルな動きが再現されることになるだけにテレビのCMやビデオゲーム界も全く新しい世界になりそうだ。

  今年、正月明けから開発に取り組んできた海賀さんは「一番、苦労したのはアナログの踊りと技術的な思考をどう融合させるかだった。マネージャーとして見守ってくれた長瀬さんの協力やわらび座のおかげだ」と話す。

  このソフトの完成によって今後は全国の舞踊の名人らの動きのデーターも集積し、伝統的な振り付けそのものを後世に伝える貴重な資料にもしたいと期待する。しかもビデオと大きく違うのはあらゆる角度から踊り手の動きを観察できるため、振り付けの研究や踊り手の育成にも役立つうえに学校の教育現場での踊りの指導などにも役立つという。また、舞台の制作段階で、画面上に“仮想舞台”を作ることも可能となり、演技と演出の研究にも役立つことになる。