たざわこ芸術村でハイテクを駆使して舞踊研究

通産省のマルチメディア支援事業の対象に

世界にも例の無い舞踊の振り付けを立体画像化へ(3月27日・金)

 田沢湖町のたざわこ芸術村(小島克昭代表)のハイテク部門である「デジタルアートファクトリー(DAF)」では、通産省のマルチメディア支援事業の選定を受けて舞踊の振り付けをコンピューターで立体画像化するソフトウエアの開発に取り組んでいる。秋田大学と県工業技術センターの協力を得て研究を始めたもので、様々な踊りの動きをデーターとして蓄積し、振り付けの研究や踊り手の育成に役立てるほか、アニメや映画、舞踊の創作など広範な用途を持つソフトとなるだけに完成すると世界的にも注目される高度な技術となる。                    

 通産省のマルチメディアコンテンツ制作支援事業は優れたアイディアや技能を持ちながら、資金不足でコンテンツ制作に恵まれないベンチャー企業や中小企業の制作技術、制作素材の開発を支援し、わが国のマルチメディアコンテンツ産業の活性化を図ろうと27億円の予算を組んで、公募することになったもの。                                  

 マルチメディアはコンピューターを使ったデジタル音声情報、映像情報、活字情報の組み合わせであり、インターネットがその身近なものだが、コンテンツはその中の一つひとつの素材の制作をいう。                                         

 公募した結果、全国から1198件もの応募があった。DAFでは、「民族芸能の3次元デジタル舞踊符の開発と作成」という研究課題で応募。その結果、厳しい競争を勝ち抜いて35件の支援の枠に選ばれた。採択されたもの中には株式会社黒澤プロダクションや「音楽の友社」など著名な企業がほとんどだ。                                      

 たざわこ芸術村は、民族舞踊の現代化を目指す劇団「わらび座」を母体とする文化施設。DAFは、劇団のコンピューター室として、チケットの管理や経理に使うソフト作りを担当していたが、マルチメディア産業の急速な進歩に伴い、その可能性を探ろうと2年前に「デジタルアートファクトリー」と名前を変え、インターネットのプロバイダーである「きたうら花ねっと」事務局を努める一方、マルチメディアの研究とソフト開発に当たってきた。                

 今回、通産省の支援を受けて開発することになったソフトは舞踊コンポーザーと舞踊コンバーターの2種類。特殊な装置で磁気を張りめぐらせた約30平方メートルのスタジオで、両手の甲や両腕、両足、頭、腰など16か所にセンサーを取り付けた踊り子に舞踊を演じてもらい、その動作を音楽の音符のように「舞踊符」として記号化し、コンピューターに蓄積。音楽がドレミの音符の組み合わせで作曲されるように、舞踊コンポーザーは、そのデーターを分析して舞踊符を作り、新しい踊りを創作できるようにするもの。いわば恐竜の登場で人気を呼んだアメリカ映画「ジェラシックパーク」はコンピューターで恐竜の動きを分析し、それをグラフィック化したものだが、DAFでの取り組みは人間のもっと複雑な踊りの動きをコンピューターで分析し、そのデーターを蓄積することになる。

 これに使う装置としてアメリカの会社からモーションキャプチャーという機械を購入。モーションは動きを、キャプチャーは収録すると直訳されるようにセンサーを付けた人の踊りの動きを収録し、舞踊符を立体画像として取り込み、コンピューターの画面上で動かす。コンピューター画面では、センサーによって得られたデーターが点のようにしか見えないが、その点に衣装を着せ、顔を描くと実際の人間の動きを再現するだけに、ぎごちなかったアニメーション映画とは違ったリアルな画像の再現にもなる。                                  

 DAFではこれから踊りに精通したわらび座の団員が得意とする15種類の踊りのデーターを収録。さらに全国の舞踊の名人らの動きのデーターも集積する予定で、これによって伝統的な振り付けそのものを後世に伝える貴重な資料にもなると期待する。しかもビデオと違いあるゆる角度から踊り手の動作を観察できるため、振り付けの研究や踊り手の育成に役立つ上、学校の教育現場でも踊りの指導などに役立つソフトになるという。また、舞台の制作段階で、画面上に“仮想舞台”を 作ることも可能となり、演技と演出の研究にも役立つ。                   

 さらにキャラクターの顔や衣装を自由に変えることもできるのでテレビCMやビデオゲームへの活用も可能であり多様な商品化も目指せると話す。                     

 この研究のチーフエンジニアとして取り組んでいる海賀孝明さん(27)は「今回、採用された多くの企業はソフトウエアーの会社が多い。劇団という異質の団体が認められたことそれ自体、意義深いことと思う。結成して47年というわらび座の蓄積と、コンピューターの可能性を自由に研究させてくれたチーフディレクターの長瀬一男さんとわらび座があったおかげだ」と喜んでいる。ソフトの完成は9月を予定している。